翻訳|antheridium
植物の配偶体上に生じ,精子をつくる雄性配偶子囊で,有性生殖にかかわる。有性生殖をしないラン藻類を除くほとんどの藻類では造精器は一つの細胞からなり,その中に一つの精子がつくられるか,その内容が分割して多くの精子をつくる。車軸藻類の造精器では,多細胞性の球状構造の中に造精糸が包まれている。この点で車軸藻類は陸上のコケ植物やシダ植物に似る。コケ植物やシダ植物の造精器も多細胞性で,最外層の細胞群は袋状の壁をつくり,その中で多くの精子ができる。高等なシダ類では造精器壁は3細胞性である。裸子植物と被子植物では配偶体は花粉管で,それ自身が微小のため造精器はつくられず,生殖細胞が直接分裂して精子または精核ができる。シダの造精器の形成を促す造精器誘導物質があり,それがジベレリンに似た化学物質であることが確かめられている。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
植物が雄性配偶子(精子、雄性生殖細胞ともいう)を形成する器官のことで、分類群によって、その構造の発達にはさまざまの程度がある。
藻類や菌類では簡単な嚢(のう)状であり、造精器に関係する全細胞が精子になる。車軸藻植物では、かなり複雑で、節(せつ)(葉の分岐点)の部分の表皮細胞から突起した台細胞上に生じた8個の楯(たて)細胞が接着して球形の造精器を形成する。楯細胞の内側中央部には柄細胞が生じ、その先端に8本の造精糸が房状につき、造精糸の各細胞からは2個ずつ精子が形成される。
コケ植物では、配偶体(コケの植物体)の茎の頂端につく雄包葉(蘚(せん)類)や葉状体(ゼニゴケ)の雄器床上に形成され、楕円(だえん)形をなし、中に数百個の精子を生じる。
シダ植物では前葉体(配偶体)上に造精器が形成される。多くのシダ類では、前葉体の下面または縁辺に形成され、通常、3個の細胞(底細胞、環細胞、蓋(がい)細胞)で構成される。また、異形胞子を生じるシダ植物では、小胞子の殻中に形成される。この場合、前葉体は極端に退化して、1個または数個の細胞であるにすぎない。
[安田啓祐]
…配偶体はゼニゴケのように葉状,またはスギゴケのように茎と葉が分化し,糸状の仮根rhizoidをもつ。造卵器はフラスコ形で長いくびをもち,造精器は棍棒状または球状。精子は先端に2本の鞭毛(べんもう)をもち,水中を泳いで造卵器に至り,そのくびの中を通って卵細胞に達する。…
…一部のものでは塊状になり,菌根性のものもある。配偶体には造卵器と造精器がつくられる。造卵器は頸卵器と呼ばれるもので,とっくり状をしており,卵細胞を1個つくる。…
※「造精器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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