ゼニゴケ(読み)ぜにごけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼニゴケ」の意味・わかりやすい解説

ゼニゴケ
ぜにごけ / 銭苔
地銭苔
[学] Marchantia polymorpha L.

コケ植物ゼニゴケ科の1種。植物体は平らな葉状体で、幅1センチメートル内外、長さ5センチメートル内外になり、湿った土の上に横にはって群生する。濃緑色で二叉(にさ)状に1~2回分かれる。葉状体表面には多数の六角形の区画があり、この中央に灰白色の点状になった気室孔がある。葉状体腹面には多数の灰白色の仮根があり、仮根の細胞には大小の突起が内側に向けて出ている。雌雄異株雄器托(たく)は高さ2センチメートル内外の柄(え)をもち、円盤状。雌器托は高さ5センチメートル内外の柄をもち、掌状に分かれる。胞子体は雌器托の下面につくられ、熟すと黄褐色となる。葉状体表面に盃(はい)状の無性芽器(盃状体)がつくられることが多く、このなかに多数の濃緑色の無性芽ができる。無性芽は湿った地上に落ち、成長してゼニゴケの体をつくる。ほとんど全世界的に分布し、日本でも各地にごく普通にみられる。無性芽による繁殖力が強いため、園芸家の間では他の植物を枯らすとして嫌われている。

 なお、コケ植物のなかで葉状体となるものを一般的にゼニゴケという場合がある。このときにはゼニゴケ科以外にジャゴケ科、ミカヅキゼニゴケ科、ミズゼニゴケ科その他が含まれるが、葉状体の形態、繁殖法などは、それぞれで著しく異なる。

[井上 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼニゴケ」の意味・わかりやすい解説

ゼニゴケ(銭苔)
ゼニゴケ
Marchantia polymorpha

タイ類ゼニゴケ科の1種。陰湿な地,家屋の北側の空地のような場所に生える。葉状体は二叉状に分岐し,腹面に仮根があり,表面には網目とその中央に1個ずつの小穴とがみられる。この小穴は気孔口で4個の孔辺細胞から成っている。この網目と孔口の形が,穴あき銭を並べたようなので,ゼニゴケの名がある。雌雄異株。雌株に雌器托,雄株に雄器托を生じる。雌器托は 10本前後の指状の突起ができ,その股の下部にある2枚の包膜の間に数個の造卵器ができる。雄器托は有柄の円板状で,その上面に放射状に多数の小穴ができ,そのおのおのに1個ずつの造精器ができる。造精器が成熟する頃,雨などの水分によって精虫が表面に流れ出し,雌器托の浸出物質に導かれて,造卵器内で受精する。やがて 蒴ができ,蒴柄が伸びて包膜の外に出,胞子が外に出る。胞子とともに生じた螺旋状弾糸が,乾湿の変化に応じてこれを助けるようになっている。なお,これらの生殖法のほかに,葉状体にはしばしば杯状体の器官を生じ,その中に無性芽ができ,それによっても繁殖する。

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