改訂新版 世界大百科事典 「遅延回路」の意味・わかりやすい解説
遅延回路 (ちえんかいろ)
delay circuit
フィルターや増幅回路に信号を通すと,その周波数特性のために,入力信号に対して出力信号に時間遅れを生ずる。最近の電子機器,とくにビデオ信号を扱うVTRなどでは信号をいろいろな成分に分けて記録し,再生後再びもとの信号に合成するという複雑な信号処理を行う。このとき,それぞれの信号成分は異なった時間遅れを受けるため,合成するとき時間遅れをそろえることが必要になる。このため遅延回路が用いられる。遅延回路に要求される特性は,信号の周波数帯域の範囲で平たんな振幅特性と一定の遅延時間をもつことである。従来はLC回路を多段に接続した集中定数回路と,丸棒の鉄心にコイルを巻き外部導体をかぶせた分布定数回路が用いられてきた。最近は信号を時間的にサンプリングして,多段の電荷転送素子(CCD)を通して遅延させるCCD遅延回路が用いられるようになり,画期的な小型化が可能となった。
執筆者:柳沢 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報