サーミスター(読み)さーみすたー(英語表記)thermistor

翻訳|thermistor

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サーミスター」の意味・わかりやすい解説

サーミスター
さーみすたー
thermistor

電子部品として使いやすい抵抗値と温度特性をもった半導体デバイス。温度が上昇すると抵抗値が下がるNTC(negative temperature coefficient thermistor)、温度が上昇すると抵抗値が上がるPTC(positive temperature coefficient thermistor)、およびある温度で抵抗値が急変するCTR(critical temperature resistor)に分類される。

 NTCはおもにマンガンコバルトニッケル、鉄など遷移金属酸化物の複合焼結体で、他の半導体と同様に、
  ρ=ρexp(B/T)
   =ρaexp(B/T-B/Ta)
性質をもっている。この場合、ρ、ρaは温度T、Taにおける抵抗率、ρは温度が無限大のときのρを表す。温度係数αはα=-B/T2の関係にあって、金属に比べて絶対値で1桁(けた)大きく-2~-7%/℃の値をもっている。

 NTCの構造には、直径0.2~2ミリメートルのビード形、直径2~50ミリメートル、厚さは直径の約10分の1のディスク形、ディスク形の中央に穴のあるワッシャー形、直径1~5ミリメートル、長さは直径の3~10倍のロッド形、および厚さ1~50マイクロメートルのフレーク形がある。ビード形およびディスク形は、その大きいαを利用して家庭電器、自動車、農畜水産、工業計測用の温度センサーとして多量に使われている。寸法が小さいために細かい場所および早い温度変化の測定に適しており、また10-4~10-3℃の温度変化も検出可能である。ビード形NTCに通電して自己加熱させると、電圧‐電流特性に負性抵抗特性が現れることを利用して、通信機の自動利得調整装置、リミッターなどに使われている。また自己加熱に時間的な遅れがあることを利用して、遅延動作およびサージ電力吸収用の素子としても使われている。この負性抵抗特性が、風速真空、ガスの種類その他の環境条件によって変動することを利用して、風速計真空計、ガス分析計などのセンサーとしても利用されている。フレーク形は熱容量が小さいことを利用して、赤外線の検出に使われている。

 PTCはおもにY2O3などで原子価制御して導電性を与えたBaTiO3系の半導体で、キュリー温度付近で電気抵抗が急変する。バリウムストロンチウムまたは鉛で置換することにより、キュリー温度を零下50~300℃に移動させることができる。PTCは温度センサーとしても使われているが、最大の用途は、自己加熱の時間的遅れと電流制限効果を利用した遅延動作、自動消磁装置および定温発熱体である。構造としてはディスク形が一般に用いられている。

 CTRはVO2-BaO-P2O5系複合酸化物焼結体で、タングステンゲルマニウム、鉄などの酸化物を添加することによって急変温度を10~80℃に移動させることができる。その抵抗急変特性が異常温度の検知および定温度で動作する温度センサーとして利用されている。CTRの構造としてはビード形および厚膜形、薄膜形がある。

[二木久夫]

『二木久夫著『感温半導体の実際』(1980・広済堂産報出版)』


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