日本古代において,大王の喪葬儀礼に従事した集団。埴輪の製作,大王陵の造営や喪葬儀礼に従事した氏族として,土師(はじ)氏がよく知られている。遊部は,土師氏に統轄されて,殯宮(もがりのみや)内の諸儀礼に供奉する集団であったらしい。《令集解》喪葬令所引の古記(大宝令の注釈書)に遊部の由来について,詳細な記事がみえている。それによると,遊部は大和国高市郡にいて,垂仁天皇の庶子であった円目王とその妻の伊賀比自支和気の女が生んだ苗裔であった。大王の没時に氏人から,刀を負い戈を持つ〈禰義〉と酒食を捧げ持ち刀を帯びる〈余比〉が選ばれて,殯宮に供奉したという。武器を保持して,大王の死魂の荒ぶことを防ぎ,酒食を捧持することを職掌としたことがうかがえる。《和名抄》に,高市郡遊部郷がみえ,橿原市四分町を中心とした一帯が想定されている。なお,上記の古記では,河内の野中や古市に住み,歌垣に奉仕した人々(土師氏と考えられる)をも,遊部としている。
→殯(もがり)
執筆者:和田 萃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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