(読み)モガリ

百科事典マイペディアの解説

殯【もがり】

本葬まで貴人の遺体に納めに安置してまつること。の一種とみられ,その建物を殯宮(もがりのみや)という。古代皇室の葬送儀礼では,陵墓ができるまで続けられ,その間,高官たちが次々に遺体に向かって(しのびごと)をたてまつった。
→関連項目小墾田宮古市倭人

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世界大百科事典 第2版の解説

もがり【殯】

日本古代の葬制。人の死後,本格的に埋葬するまでの間,遺体をひつぎに納めて喪屋内に安置し,あるいは仮埋葬して,近親の者が諸儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗。その目的を,死者のよみがえりに求める説もある。殯の萌芽形態は,《魏志倭人伝》にすでに見えており,古代日本のみならず,中国南部から中部インド,メラネシアポリネシアなどに広く分布する複葬形式の一つと認められる。殯についてとくに注目されるのは,大王没後殯宮(もがりのみや)が新たに造営されて,殯宮の内や殯宮を取り囲む空間(殯庭(もがりのにわ))で,各種の諸儀礼が行われたことである。

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大辞林 第三版の解説

かりもがり【殯】

もがり(殯)に同じ。 もがりの意が含まれていることが忘れられて生じた語

もがり【殯】

上がりの意という
あらきに同じ。 五月、河内の古市ふるいちに-す/日本書紀 欽明訓

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精選版 日本国語大辞典の解説

あがり【殯】

〘名〙 人が死んで、体からが遊離すること。また、その状態にあること。
※書紀(720)仲哀九年二月「豊浦宮(とゆらのみや)に殯(もがり)して、无火殯斂〈无火殯斂、此をば褒那之阿餓利(ほなしアガリ)と謂ふ〉を為」

かり‐もがり【殯】

〘名〙 埋葬するに先だって、しばらくの間、遺体を棺に納めてとむらうこと。もがり。
※今昔(1120頃か)三「仏、涅槃に入給ぬれば、阿難、仏の御身を殯(かりもがりし)奉て」

ひん‐・す【殯】

〘他サ変〙 死者を、棺に入れてまつる。殯宮(ひんきゅう)に納める。かりもがりをする。
※続日本紀‐大宝二年(702)一二月辛酉「殯于西殿

もがり【殯】

〘名〙 (「喪(も)(あがり)」の変化した語という) 貴人の葬儀の準備などが整うまで、遺体を棺におさめてしばらく仮に置いておくこと。また、その所。あらき。そのお。
※書紀(720)斉明四年五月(北野本訓)「今城(いまき)の谷の上に、殯(モカリ)を起てて収む」

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世界大百科事典内のの言及

【葬制】より

…庭には,遺牌を作る前に神を依らせるものである〈重(ちよう)〉が立ててあるが,その上に銘を載せる。亡くなった翌日,死体を整え衣衾を加える〈小斂(しようれん)〉という礼を行い,小斂の翌日には,部屋の場所をかえて同じようなことをする〈大斂〉を行い,その後,納棺し殯宮に安置する〈殯(ひん)〉が行われる。小斂から殯までの期間は,死者との関係によって定められた厳しい服装規定に従い,またたびたび悲しみを表す舞踏が行われる。…

【死】より

…日本では古来,ギリシアの場合におけるように霊・肉二元論の考え方が主流を占めてきた。人の死後その遺体を,埋葬までの一定期間地上に放置するという殯(もがり)の風習が古くから行われたが,その背景には魂が遺体から分離し遊離するという観念が横たわっていた。そこから,死後の魂を呼び戻そうとする魂(たま)呼びの儀や,逆に死後の荒魂を抑えつけ閉じこめようとする鎮魂の呪術が行われるようになった。…

【黄泉国】より

…死んだイザナミは〈出雲国と伯伎国(ははきのくに)との堺の比婆山(ひばやま)〉に葬られたとされ,《日本書紀》の一書には〈熊野の有馬村〉に葬ったと記し,土地の人々はそこを〈花の窟(いわや)〉と呼んでいる。黄泉国へは山中や海辺のこうした洞窟を伝ってじかに往来することができると想像されていたのだが,死者の住む黄泉国のイメージは〈(もがり)〉の葬礼に基づいてもいた。殯とは埋葬するまでのあいだ死体を安置しておくことで,この期間は生死の境が定まらず,死者の魂を呼びもどそうとして歌舞などの葬礼が行われた。…

※「殯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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