朝日日本歴史人物事典 「道阿弥」の解説
道阿弥
生年:生年不詳
室町前期の近江猿楽比叡座の能役者。通称犬王。足利義満時代のトップスターで世阿弥の能に大きな影響を与えた。若いころ,佐々木導誉(京極高氏)に認められ,康暦2/天授6(1380)年ごろから勧進猿楽などで大活躍し,観阿弥亡きあとは足利義満の最も愛好する能役者となり,康応1/元中6(1389)年の厳島詣にも同行している。応永3(1396)年一時失脚して出家し犬阿弥と号したが,ほどなくカムバック,義満の法名道義の1字をもらうという破格の待遇を得,道阿弥と称する。歌舞に秀で情趣豊かな芸風であり,応永15年の後小松天皇の北山行幸の際,天覧能の主役を勤めて義満から3000貫もの褒美をもらっており,義満にとってその理想美を舞台に体現する役者であった。死去のときには紫雲が立ったと伝えられる。
(松岡心平)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報