遠州緞子(読み)えんしゅうどんす

精選版 日本国語大辞典 「遠州緞子」の意味・読み・例文・類語

えんしゅう‐どんすヱンシウ‥【遠州緞子】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 名物裂(めいぶつぎれ)一つ石畳に宝づくしの模様などがある。小堀遠州が所持していたという。
  3. 絹織物一種緞子風の綾織物で、静岡県浜松、およびその付近で産する。表具袋物などに用いる。
    1. [初出の実例]「柱のおり釘には遠州純子(ヱンシウドンス)の細ながき首まもりが引懸けて」(出典:洒落本・一向不通替善運(1788))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠州緞子」の意味・わかりやすい解説

遠州緞子
えんしゅうどんす

名物裂(ぎれ)の一つ。縹(はなだ)、浅葱(あさぎ)、白の石畳に、牡丹(ぼたん)花、七宝を互(ぐ)の目に配した緞子。石畳の方形3センチメートル前後。類裂(るいぎれ)が幾種かあり、後世の写しには黄や萌黄(もえぎ)の色糸を交え、石畳も小ぶりにつくられているものがある。また遠州好み緞子と称されるものに萌黄地捻梅文(ねじりうめもん)緞子(松屋肩衝(かたつき)茶入の仕覆(しふく))がある。いずれも名称の由来は小堀遠州(1579―1647)の愛用裂であったことによると伝えられるが、遠州の名が冠された緞子は、文様が一般の緞子のように裏繻子(うらじゅす)組織によらず、五枚綾(あや)調の組織で、明快に織り出されている点に特徴がある。またそれは中国明(みん)・万暦(ばんれき)年間(1573~1619)の華やかな緞子の特色でもある。

[小笠原小枝]

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