袋物(読み)フクロモノ

デジタル大辞泉 「袋物」の意味・読み・例文・類語

ふくろ‐もの【袋物】


紙入れタバコ入れ手提げなど袋状の入れ物の総称。
茶道具を包む布製の袋。仕服しふく大津袋など。
袋に入れた品物。「袋物の菓子」
壺や徳利とくりなどのように、胴がふくらんでいて口が狭い形の陶磁器

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精選版 日本国語大辞典 「袋物」の意味・読み・例文・類語

ふくろ‐もの【袋物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. タバコ入・紙入・がまぐち・手提げなど、袋の形をした物入の総称。
    1. [初出の実例]「袋物 巾着、鼻紙入、胴乱、煙草入など都て袋物と唱」(出典:浪花聞書(1819頃))
  3. 袋に入れた品物。「袋物の菓子」

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改訂新版 世界大百科事典 「袋物」の意味・わかりやすい解説

袋物 (ふくろもの)

物を納める袋状の道具。布,皮革,ビニル,紙類でつくられ,また編物や組物製のものもある。使用の状態により携行袋,保存袋,使用袋に大別される。携行袋にはハンドバッグ,買物袋,紙幣入れ,貨幣入れ,名刺入れ,鏡入れ,紙入れ,タバコ入れ,その他さげ袋類がある。保存袋には茶器入れ,武具入れ,調度品入れ,楽器入れなどがある。使用袋のおもなものは漉袋(こしぶくろ)類である。袋物はわれわれの日常生活に深くつながるため,食糧,衣服,器財,燧(火打)袋,武具などを納めるために用いたものが最も古い。衣服,器財を入れた携行袋は強さと装飾を兼ねて上刺(うわざし)をほどこして上刺袋と称し,平安時代から盛んに用いられ,江戸時代にはこれを番袋ととなえ,風呂敷とともに需要の高かった袋物である。発火器としての燧袋は,匂袋(においぶくろ)とともに腰さげ袋として古くから用いられ,のち金銭や薬品を入れるようになり,鎌倉時代には巾着(きんちやく)の発生をみた。

 貨幣経済の発達は金銭携行のための袋物を発達させ,江戸時代には早道(はやみち)(銭入れ,タバコ入れに用いる),胴乱,一つ提(さげ)(タバコ入れの一種で,きせる筒を離し,タバコ入れのみに緒などをつけた袋),藩札入れ,燕口(つばくらぐち)(口を開くとツバメの口のような形になる携帯用の袋)が用いられることになり,タバコの伝来に伴う喫煙の風習は半月,腰差,叭(かます),火の用心,袂落(たもとおとし)等のタバコ入れを生んだ。また,上下一般が鼻紙を用いるようになって懐中物の鼻紙袋ができ,これに鏡,ようじ,小銭を入れる仕掛けをつくって三徳ととなえ,女子の愛用するところとなり,筥迫(はこせこ)に近づいていった。胴乱は初めは鉄砲の玉入れであったが,のちタバコ入れや銭入れとなり,さらに明治初期からいろいろのものが入る(かばん)に変わり,生活の洋風化に伴い折鞄となって普及していった。女子用の袋物は鼻紙袋に変わって信玄袋,千代田袋が盛んに用いられ,明治末期にはオペラの流行につれてオペラバッグを生み,大正末期からハンドバッグの時代へと発展していった。一方,信仰から生まれた懸守(かけまもり),幣袋(ぬさぶくろ)なども鎌倉・室町時代には旅行,その他の際に欠くことのできない袋物であったが,江戸時代には御守袋として腰さげ物と変わった。保存袋は奈良時代から楽器袋,武具袋として用いられ,ついで調度品袋となり,室町時代に入っての茶道の発達は名物裂(めいぶつぎれ)による茶器袋を生み,今日でも茶人の間で珍重されている。農山村における在来の携行袋には,木綿,麻,フジなどの織布やわら,イ(藺),桜の皮などによる編・組物,こより製品などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「袋物」の意味・わかりやすい解説

袋物
ふくろもの

袋の形をした物入れの総称。品物を袋の中に収めたり、携行したり、保存、整理するのに用いられ、皮革、紙、布、合成繊維などでつくられている。袋物は人類の発生とともに発達し、その生活の変化によって、さまざまな変化を遂げている。袋物の形態は、わが国では古墳時代の人物埴輪(はにわ)のなかに、腰提げ物として登場してくるのがもっとも古く、おそらく発火器としての火打石の袋であろう。

 袋物を用途別に大きく分けると、保存用の物としては、衣服類を入れる上刺(うわざし)袋と、宮中に仕えている人たち宿直(とのい)をする際に用いた殿居(とのい)(宿直)袋、また食料を入れる餌(え)袋、楽器を入れる楽器袋、武器を収める太刀(たち)袋、あるいは茶道具を収める仕覆(しふく)がある。携行する袋には、巾着(きんちゃく)、火打袋、財布、紙入れ、たばこ入れ、胴乱、守り袋、匂(にお)い袋、香袋、背負い袋などが古くからあった。欧米文化が輸入されてからは、手提げ袋、買い物袋、ショルダー類が盛んに用いられることとなった。また懐中袋として発生した鼻紙袋が、のち三徳(さんとく)、箱迫(はこせこ)となり、また財布より使いやすい早道(はやみち)という銭入れが考案された。また守り袋は平安時代以来懸守(かけまもり)という首にかけて用いたものが、後世になると腰提げ物へと変わった。

 これらの袋物には、皮革に始まって、布帛(ふはく)類、高級な織物類が材料として用いられた。皮革は鹿(しか)のなめし革が多い。高級織物は中国からもたらされた金襴(きんらん)、緞子(どんす)、錦(にしき)類の名物裂(めいぶつぎれ)、それを模して京都西陣でつくった織物、のちには羅紗(らしゃ)に吉祥模様を五彩の糸で刺したもの、あるいはアップリケにしたり、絽刺(ろざし)、佐賀錦などでもつくられた。明治以降、ワニ、トカゲ、ビーズ、スパングル、ミノムシの蓑(みの)、さらに人造絹糸人造皮革など化学合成物も利用される。

 また袋物の特色はその留具にある。古くから用いられたものは組紐(くみひも)で、その結び方にも、いろいろのくふうが凝らされた。皮革類の場合は、その特色があまりみられない。腰提げの場合は根付けが唐木や牙(げ)でつくられ、りっぱな工芸品となっている。また金、銀、赤銅(しゃくどう)、四分一(しぶいち)を使っての精緻(せいち)な作品、明治以降は口金(くちがね)に種々のくふうが行われ、わが国独自の落ち着いた、しっとりとしたものがつくられ、今日に至っている。これとは反対に、山村・農村・漁村の袋物は、身辺にある藁(わら)、樹皮、木綿、麻などの材料を使い、なかにはこれに刺し物を加えて、こぎん、菱刺(ひしざし)にしたり、ねじ袋仕立てにして用いた。

[遠藤 武]

現代の袋物

実用と装飾を兼ねた鞄(かばん)、ハンドバッグ、装飾性の強いポーチ類をはじめ、実用的なものには、各種の用具袋、道具袋、運搬袋(カメラバッグ、スポーツバッグ、アタッシェケース、ナップザック、トートバッグなど)と保存袋(ガーメントバッグ、アクセサリーケースなど)がある。今日的なものとして、軽量で使い捨て自在の紙袋、紙やビニル製のショッピングバッグ、携行の便宜を図って底に脚輪をつけたキャスターバッグ、防虫・防湿のほか脱酸素作用のある特殊フィルム製の毛皮用保管収納袋などが注目される。

[平野裕子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「袋物」の意味・わかりやすい解説

袋物
ふくろもの

種々の品物を入れて携帯,運搬する袋状の用具の総称。手下げ,買物袋,紙入れ,筥迫 (はこせこ) ,印籠 (いんろう) ,鼻紙袋,たばこ入れ,火打袋,香袋,守り袋など。西洋風のものではハンドバッグ,オペラバッグ,ボストンバッグなどがある。

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