日本大百科全書(ニッポニカ) 「選挙争訟・選挙訴訟」の意味・わかりやすい解説
選挙争訟・選挙訴訟
せんきょそうしょうせんきょそしょう
選挙争訟は広義では、選挙に関するすべての争訟、すなわち選挙人名簿に関する争訟、選挙の効力に関する争訟、当選に関する争訟をさすが、狭義では選挙の効力に関する争訟だけをいい、この用法が多い。そして、選挙争訟、当選争訟のうち、裁判所へ提起する訴訟をとくに選挙訴訟、当選訴訟という。
狭義の選挙争訟については、選挙管理委員会が選挙の管理執行に関する規定に違反し、それによって選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に、選挙人または公職の候補者(参議院比例代表については名簿届出政党など)は、選挙の一部無効あるいは全部無効を主張しうることになっている(公職選挙法202条~205条)。また当選争訟は、選挙の管理執行が有効なことを前提としてなされる争訟で、その多くは投票の効力をめぐって争われる場合である(同法206条~209条の2)。無効な投票の事例としては、他事記載(候補者の氏名以外のことを書いたもの)、氏名の確認しがたいものが多い。選挙・当選無効の主張は、地方の議会議員および長の選挙については、選挙管理委員会に対する異議の申出・審査の申立てを経て、国会議員の選挙については、直接に都道府県選挙管理委員会を被告として、高等裁判所に提訴することができる。
[池田政章]