選挙人の資格を公証する目的で作られる,選挙人の氏名を記録した名簿のこと。この名簿に登録されていないものは投票することができないが,名簿は選挙人の資格を公証するのみで資格を賦与するものではないから,登録されたものでも,選挙人の資格のないものおよび選挙当日に選挙権をもたないものは投票することができない。
選挙人名簿の調製については,選挙のつどに調製される随時主義と一定期間内に行われるすべての選挙に使用される据置主義,職権により調製される職権主義と有権者の申告により調製される申告主義などの区別がある。1966年の公職選挙法改正までは,選挙人名簿は,市町村の選挙管理委員会が毎年9月15日現在により職権をもって調製し1年間据え置かれる〈基本選挙人名簿〉と,市町村の選挙管理委員会が,選挙が行われる場合に,選挙人名簿に登録されていない有権者を登録するために,その申出により調製する〈補充選挙人名簿〉との2本立てになっていたが,現行の選挙人名簿は一元化され,職権主義・永久据置主義が採られている。
この〈永久選挙人名簿〉は,選挙人の氏名,住所,性別および生年月日などを記載したカード式の名簿で(公職選挙法20条),その調製・保管には市町村の選挙管理委員会があたり,毎年9月(9月1日現在で,原則として同月2日に登録)および選挙が行われる場合に名簿の登録を行う(19,22条)。登録は原則として当該市町村の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で,そのものにかかわる当該市町村の住民票が作成された日から引き続き3ヵ月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されているものについて行われ,いったん登録されると,死亡,国籍喪失,区域内における住所の喪失後4ヵ月経過などの事由で抹消されるまで,その登録は永久に効力をもつ(21,28条)。選挙人名簿は,一定期間,市役所・町村役場などで縦覧に供され,登録に不服のあるものは,縦覧期間内にその市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができ,なお不服があるときは,裁判で争うこともできる(23~25条)。
この名簿は,公職選挙法の適用されるすべての選挙に使用されるほか(19条),地方自治法による住民投票,最高裁判所裁判官の国民審査などにも使用される。
なお,1998年の公職選挙法改正(第4章の2を新設)により〈在外投票〉制度が認められた(2000年秋以降に実施)ので,新たに在外選挙人名簿が市町村選挙管理委員会により調製されることとなった。
執筆者:日比野 勤
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選挙権者すなわち選挙人の氏名、住所、性別、生年月日などを登録した名簿。あらかじめ選挙人の数を確定し、不正な投票を防止するため、選挙権を有するものを公認する必要があり、市(特別区を含む)町村選挙管理委員会が作成する。従来は一か年据置き制をとっていたが、1966年(昭和41)に改正されてカード式名簿となり、「永久に据えおくもの」(永久選挙人名簿)とされた。公職選挙法の定めるすべての選挙を通じて一つの名簿とされ(同法19条1項)、投票区ごとに編成される。名簿への登録は、市町村選挙管理委員会が、当該市町村に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で、住民票が作成された日から3か月以上住民基本台帳に記録されている者について、毎年3、6、9、12月および選挙を行う場合になされる。選挙人名簿は一定期間、市役所、町村役場などで縦覧に供され、登録に不服のある者はその期間内に市町村選挙管理委員会に異議を申し出る。公職選挙法の選挙はこの名簿によるから、名簿に登録されていないと、登録される旨の決定書または確定判決書を持参しない限り、投票することができない(同法42条1項)。
また、1998年(平成10)には海外に居住する日本人が投票を行うための在外選挙制度が成立し、在外選挙人名簿が作成されることになった。在外選挙人名簿への登録は、年齢満20年以上で、その者の住所を管轄する在外公館の管轄区域内に3か月以上住所を有する者の申請の手続きによる。在外選挙人は、日本国内の最終住所地(1994年4月30日以前に出国した場合は本籍地)の市区町村の在外選挙人名簿に登録される。
[池田政章]
2015年(平成27)6月に成立した「公職選挙法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第43号)により、公職の選挙の選挙権を有する者の年齢について、満20年以上から満18年以上に改められた。改正法の施行は2016年6月19日。
[編集部]
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(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)
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…日本の近代選挙制度は,1889年の大日本帝国憲法の制定にともなって制定された衆議院議員選挙法に始まるが,納税額など一定の財産資格を付した制限選挙の時代,さらには選挙運動の規制を強めたうえでの男子普通選挙制の時代が続き,公選法が具現している原理の確立は日本国憲法の制定をまたなければならなかった。
[選挙権と選挙人名簿および被選挙権]
日本において,選挙権は,一般的には,国民の権利と解されている。衆・参議院議員の選挙権は,日本国民である年齢満20歳以上の者に原則として認められている(公職選挙法9条)。…
※「選挙人名簿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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