精選版 日本国語大辞典 「遺伝暗号」の意味・読み・例文・類語
いでん‐あんごう ヰデンアンガウ【遺伝暗号】
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遺伝子として働く核酸にヌクレオチドの配列順序として記録されている暗号。タンパク質のアミノ酸配列に翻訳され、遺伝情報を決定する。遺伝子核酸はデオキシリボ核酸(DNA)かリボ核酸(RNA)であり、ともに4種のヌクレオチドからなる。ヌクレオチドの特性を決めるのは塩基の部分で、DNAをつくる塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)であり、RNAはA、G、Cのほか、Tのかわりにウラシル(U)をもつ。遺伝子DNAの遺伝暗号はA、G、C、Tの4文字の組合せからできているが、これが伝令RNAのU、C、G、Aにそれぞれ転写され、核の外へ出て細胞質中のリボゾームとよばれる小粒に付着してタンパク質構造に翻訳される。タンパク質をつくっているアミノ酸は20種に限られており、その配列順序と数によりタンパク質種が決まっている。したがって、伝令RNAの遺伝暗号は20種のアミノ酸の並び方を決めている。
1961年にアメリカのニーレンバーグらは初めてDNAのアデニン塩基が並んだAAAという暗号を解読する実験を行った。彼らは試験管中にタンパク質合成に必要なリボゾーム、運搬RNA、各種の酵素を入れ、放射能をつけたアミノ酸を使い、どのアミノ酸がタンパク質鎖をつくるかがわかるようにした。AAAというDNAの暗号は伝令RNAに転写されるとUUUになるので、暗号としてはUばかりが連続してできた人工合成のRNAが用いられた。ニーレンバーグらの実験結果は、UUUはフェニルアラニンというアミノ酸の暗号であるというものであった。その後、このような遺伝暗号の解読は、人工合成したRNA断片を用いた試験管内実験、および突然変異体を用いた生体内実験の両面から進められ、1966年ごろまでにほとんどすべての遺伝暗号が解読された。
遺伝暗号はRNAレベルの塩基配列で示すのが普通である。RNAレベルの暗号とDNAレベルの暗号は対になるもので、RNAレベルの暗号がわかれば、AをTに、UをAに、GをCに、またCをGに置き換えDNAレベルの暗号を知ることができる。さて、各種の実験結果から解読されたRNAレベルの遺伝暗号は、次の特性をもっている。
(1)遺伝暗号は3文字からなり、64種ある。3文字の暗号の単位はコドンcodonとよばれる。
(2)暗号は一様に同じ形式、すなわち3文字ずつ、コドンを単位として読まれる。3文字を単位とすることからトリプレット暗号ともいわれる。
(3)暗号の文字は繰り返して読まれない。
(4)句読点にあたる暗号はなく、3文字ずつ連続して読まれる。
(5)一つの暗号は原則として一つの意味しかもたない。
(6)AUGはメチオニンの暗号であるが、例外的にもう一つの意味をもち、遺伝暗号の読み始めの暗号としても働く。
(7)UAA、UAG、UGAの三つの暗号はどのアミノ酸も指定せず、ナンセンスコドンとよばれ、遺伝暗号の読みの終止暗号として働く。
(8)一つのアミノ酸を指定する暗号は、メチオニンとトリプトファンの暗号が1種であるほかは複数あり、もっとも多いのは6種である。
遺伝暗号はウイルスからヒトに至るまですべての生物によって共通に使われ、同じように読まれている。ただし、最近、酵母やヒトなどのミトコンドリアでは、遺伝暗号の読み方が核の場合とすこし違っていることが明らかになった。たとえば、UGAはナンセンスコドンであるが、ミトコンドリアではトリプトファンのコドンになる。また、AUAはイソロイシンのコドンであるが、ミトコンドリアではメチオニンのコドンである。
遺伝子DNAの遺伝暗号は伝令RNAに転写され、細胞質中のリボゾームに付着する。一方、細胞質中の運搬RNAは特定のアミノ酸を運び、アンチコドンとよばれる三つの塩基部分で伝令RNAのコドンに結合する。たとえば、大腸菌のチロシンを運ぶ運搬RNA分子のアンチコドンはAUGであり、伝令RNAのチロシンのコドンであるUAC、およびUAUと結合できる。このようにして、伝令RNAのコドンに結合できるアンチコドンをもった運搬RNAが次々にアミノ酸を運び、タンパク質鎖が合成される。
遺伝暗号は突然変異によって変化する。遺伝子DNAのヌクレオチドの一つが他のものに置き換わると、その位置のコドンが変化し、アミノ酸1個が変化することがある。ヌクレオチドが一つまたは二つ欠失したり、挿入されたりすると、その位置から後の暗号の読み枠が全部変化し、正常なタンパク質が合成されない。このような変化はフレームシフトとよばれる。欠失と挿入が連続しておこったり、三つのヌクレオチドが欠失、または挿入されたときには、フレームシフトは正常に戻る。
タンパク質を精製して、そのアミノ酸配列を明らかにできれば、暗号表からそのタンパク質をつくる遺伝子の構造を推定できる。推定された遺伝子構造に従ってヌクレオチドを適当な酵素や触媒を用いて次々に連結すれば、その遺伝子を人工合成できる。ヒトのインスリンや、インターフェロンの遺伝子は、このようにして人工合成され、遺伝子工学実験に用いられている。
[石川辰夫]
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(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)
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…このヌクレオチドのトリプレットには43,すなわち64の種類がある。個々のトリプレットとポリペプチドに含まれる20種類のアミノ酸との対応関係を遺伝暗号とよぶが,これはニーレンバーグM.W.Nirenberg(1966)らの研究によって完全に解読された。64のトリプレットのうち三つはどのアミノ酸にも対応しない。…
…1961年にフランス・パリ学派のF.ジャコブとJ.モノーがオペロン説を提唱し,酵素の誘導合成の遺伝的調節の様式が示され,分子生物学は一つの頂点に立った。ついで,メッセンジャーRNA,転移RNA,リボソームなどタンパク合成に関与する主要因子が明らかになる過程で,クリックなどによって遺伝暗号が解かれ,遺伝情報発現のセントラル・ドグマが確立した。 分子生物学の研究対象は,細菌(原核生物)から,複雑な高等生物(真核生物)に拡大する一方で,遺伝子に関する詳細な研究が進められ,1970年代に入って遺伝子を操作する諸技術が確立した。…
※「遺伝暗号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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