配位水
はいいすい
coordinated water
結晶水のうち、陽イオンに配位結合によって直接結合している水をいう。たとえば硫酸銅(Ⅱ)五水和物は、通常、組成式CuSO4・5H2Oの青色結晶であるが、図のように5分子の水のうち4分子の水は、銅(Ⅱ)に配位して、配位子となっている。このような結晶水を配位水といっている。残りの1分子の水は硫酸イオンの酸素原子と水素結合を生成している。このような結晶中で陰イオンに結合している水分子を陰イオン水という。
硫酸銅(Ⅱ)五水和物を加熱すると、まず段階的に4分子の配位水が放出され、結晶は無色粉末となる。110℃で配位水が完全に放出されるが、250℃まで加熱すると陰イオン水も放出される。マンガン、鉄、コバルト、ニッケルなどの二価イオンの硫酸塩七水和物M
SO4・7H2O(M
=Mn,Fe,Co,Niなど)では6分子の水が配位水であり、[M
(H2O)6]SO4・H2Oの式が正確である。
ミョウバンKAl(SO4)2・12H2Oでは6分子の水はAl3+への配位水で、[Al(H2O)6]3+におけるAl-O原子間距離は1.98オングストローム(Å)と短いが、残りの6分子の水のK+への配位は弱く、[K(H2O)6]におけるK-O原子間距離は2.94Åと長い。硫酸イオンの酸素原子に対して水の水素原子、K+に対して水の酸素原子が配向している状態にあるとみることができる。このような水分子を水和水ということもあるが、配位水との明確な区別は不可能である。いずれにしても、これらの配位水はほかの結晶構成成分との相互作用がかなり強く、加熱や減圧などの操作によって結晶水を取り去れば結晶構造に大幅な変化がおこる。
[中原勝儼]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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配位水 (はいいすい)
coordinated water
狭義には,塩類の水和物の結晶水の中で,陽イオンに直接配位している水をいう(配位水のほかには,陰イオン水,格子水,沸石水などがある)。広義には,塩類に限らず錯体中で中心原子に配位している水をいう。錯体化学での配位子名はアクア。たとえばCuSO4・5H2Oの結晶中では,4H2OがCu2⁺に配位して配位水となり平面正方形型の[Cu(H2O)4]2⁺錯体をつくり,この平面の上下からSO42⁻が配位し,残りのH2OはSO42⁻と結合して陰イオン水となっている。配位水中の水素は解離して酸性を呈する傾向をもつ。たとえばAlの場合は下式のようになる。
[Al(H2O)6]3⁺⇄[Al(H2O)5(OH)]2⁺+H⁺
生じたヒドロキソ配位子をもつ錯体は,たとえば次式に示すように二つが重合して,OH⁻の橋架け配位子によるヒドロキソ橋(古くはオール橋といった)をもつ複核錯体をつくる。この反応をオール化olationという。

AlⅢ,FeⅢ,CrⅢなどのゼラチン状水酸化物の生成は,このオール化がさらに進行したものとして説明される。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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配位水
ハイイスイ
coordinated water
塩類の結晶水といわれるもののうち,陽イオンに直接配位結合している水.たとえば,MgCl2・6H2O,AlCl3・6H2Oでは,水分子はすべて,陽イオンに八面体型に配位しており,[Mg(OH2)6]2+,[Al(OH2)6]3+ と表されるので,配位水である.K2Al(SO4)2・12H2O結晶では,12個の水分子のうち6個は配位水である.残りの6個はカリウムイオンの周囲に,配位結合ではなく,水分子の双極子とイオンの電荷との静電引力により集まり,結晶格子を形成している.後者は格子水ともよばれる.CuSO4・5H2Oでは,4分子の水は配位水で,残りの1分子は水素結合によって硫酸イオンの酸素と結合しており,陰イオン水とよばれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の配位水の言及
【結晶水】より
…結晶中の存在状態により結晶水はつぎのように分類される。(1)配位水 イオンからなる結晶中でイオンに直接配位して錯イオンをつくる水分子(たとえば[Cu(OH2)4]2+)をいう。(2)陰イオン水 SO42-・H2Oのように陰イオンに結合している水をいう。…
※「配位水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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