化学辞典 第2版 「酸化チタンバリウム」の解説
酸化チタン(Ⅳ)バリウム
サンカチタンバリウム
barium titanium oxide
Ba-Ti系の複酸化物.IUPAC命名法による名称.よく知られたBaTiO3以外に,Ba2TiO4,Ba3Ti2O7などがある.多くは正八面体型のTiO6がO共有で縮合し,その間にBaが配列された複酸化物であるが,Ba2TiO4は正四面体型のTiO4構造をもつ.【Ⅰ】三酸化チタン(Ⅳ)バリウム:BaTiO3(233.21).チタン酸バリウム,メタチタン酸バリウムともいう.BaCO3とTiO2の粉末を混合し,約1300 ℃ で溶融すると得られる.純粋なものは,水溶液中でBaCl2,TiCl4およびシュウ酸の反応で得られたBaTiO2(C2O4)・4H2Oを約530 ℃ で加熱分解すると得られる.結晶系は5変態がある.-90 ℃ 以下で三方晶系,-90~5 ℃ で斜方晶系,5~120 ℃(室温の範囲)で正方晶系,120~1400 ℃ で立方晶系,1400 ℃ 以上(融点1618 ℃)で六方晶系となる.正方晶系以外のものも,室温でも準安定な状態で存在しうる.立方晶系のものがもっともペロブスカイト型構造に近い.それ以外のものはひずんでいる.正方晶系は密度6.08 g cm-3(20 ℃).キュリー点120 ℃.室温で強誘電性で比誘電率2900.圧電係数も高い.比誘電率はキュリー点で極大に達し,粒子サイズにもよるが10000以上になる.水,希酸,希アルカリに不溶,熱濃硫酸などに可溶.用途は強誘電体セラミックス,コンデンサー,圧電素子,不純分を加えてサーミスターをつくるなど,各種電子工業材(コンピューターの素子,磁気アンプ,メモリーなど)などに用いられる.[CAS 12047-27-7]【Ⅱ】四酸化チタン(Ⅳ)二バリウム:Ba2TiO4(386.53).オルトチタン酸バリウムともいう.計算量の粉末状のBaCO3とTiO2とを混合し,約1270 ℃ に加熱すると得られる.暗赤色の結晶.α相(斜方晶系),β相(単斜晶系),の2変態がある.いずれも正四面体型のTiO4が,互いにBaで結ばれた構造である.Ti-O1.76~1.84 Å,Ba-O2.7~2.9 Å(α相),2.6~3.2 Å(β相).水に不溶.冷希塩酸でTiO2とBaCl2に分解する.[CAS 12009-63-1]【Ⅲ】そのほか,組成式Ba3Ti2O7,BaTi4O9などの文献もあるが,いずれもポリマー構造物質である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報