テネシン(読み)てねしん(英語表記)tennessine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テネシン」の意味・わかりやすい解説

テネシン
てねしん
tennessine

アクチノイド人工放射性元素の一つ。原子番号117、元素記号Ts。周期表第17族に属する。新元素として認定されるまでの暫定名称はウンウンセプチウムununseptium(暫定元素記号Uus)。2009年に行われたアメリカとロシアの共同研究でカルシウム原子核をバークリウム原子核に衝突させる実験によって117番元素が合成されたとの報告が2010年にあり、2014年にはドイツのダルムシュタット重イオン研究所で、バナジウム原子核とプルトニウム原子核、あるいはチタン原子核とアメリシウム原子核の衝突実験による117番元素の生成が報告された。

 2015年12月、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)は、IUPACと国際純粋・応用物理学連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)の共同作業部会(JWP:Joint Working Party)が117番元素の発見を承認したことを発表し、ロシアのドゥブナ研究所(ドゥブナ合同原子核研究所)、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所、同じくオークリッジ国立研究所の共同研究グループに、115番元素とともに117番元素の元素名提案権を与えた。2016年6月、オークリッジ国立研究所所在地のテネシー州にちなんだ元素名テネシンtennessineと元素記号Tsが提案され、同年11月に公認された。周期表第17族はハロゲン族元素であり、フッ素からアスタチンに至る英語元素名の語尾がすべて-ineとなるところから、tennessineとなっている。

 質量数293と294の同位体報告例があるが、いずれもきわめて短い半減期でα(アルファ)崩壊してモスコビウムになる。

[岩本振武 2016年12月12日]



テネシン(データノート)
てねしんでーたのーと

テネシン
 元素記号  Ts
 原子番号  117
 原子量   (293)(294)※
 融点    ―
 沸点    ―
※括弧内の数値は原子量ではなく、同位体質量数の一例

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テネシン」の意味・わかりやすい解説

テネシン
tennessine

人工元素の一つ。元素記号 Ts。原子番号 117。2010年にロシアとアメリカ合衆国の研究グループが,ロシアの合同核研究所 JINRのサイクロトロンで, 22mgのバークリウム同位体(質量数 249)とカルシウム同位体(質量数 48)を衝突させることで,117番元素の原子 が 6個生成されたと発表した。それらの原子の質量数は 293と 294であった。質量数 293の原子 5個は 0.014秒で崩壊してレントゲニウムになり,質量数 294の原子 1個は 0.078秒で崩壊してドブニウムになった。117番元素の化学的特性はアスタチンに似ていると考えられる。名称のテネシンは,元素の発見に貢献したアメリカのオークリッジ国立研究所があるテネシー州にちなんで命名された。

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