翻訳|autoxidation
種々の有機化合物や無機化合物が空気中の酸素により室温で酸化される反応。植物油や魚油を空気中に放置しておくと徐々に変質し、場合によっては表面に薄い皮膜が生ずる。これらの変質は油が自動酸化されるためである。また、油を使った食品(たとえばポテトチップやインスタントラーメン)などの古いものや、あるいは空気中に長く放置したものの味が低下するのも、自動酸化による変質のためである。さらに、タイヤなどのゴム製品や各種のプラスチック製品が古くなると傷み、場合によってはぼろぼろに劣化するのもこのためである。したがって、合成繊維など各種の有機高分子材料の利用に際しては、その自動酸化をいかに防ぐかが重要な課題であり、そのために適切な酸化防止剤が添加されている。
純粋なベンズアルデヒドを空気中に放置すると、速やかに自動酸化を受け、過安息香酸を経て安息香酸に酸化され、その白色の結晶が析出する。このような自動酸化は、一般に遊離基(フリーラジカル)を中間体とする連鎖反応により進行し、まず過酸化物を生成する。フェノール性の化合物などを添加しておくと、自動酸化を抑制することができる。したがって、合成繊維やプラスチックには抑制剤としてこれらを添加してあることが多い。自動酸化は物質を劣化させるのみでなく、有用な物質の合成にも利用できる。たとえば、クメン(イソプロピルベンゼン)の自動酸化で、クメンのヒドロペルオキシドを製造し、これを酸で分解してフェノールとアセトンを製造することができる。無機化合物では、亜硫酸ナトリウムや鉄(Ⅱ)塩が容易に自動酸化される。
[徳丸克己]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…酸敗の反応は,酸化型酸敗,加水分解型酸敗,ケトン型酸敗に大別される。(1)酸化型酸敗 空気中の酸素が油脂の不飽和脂肪酸の不飽和結合部分に結合して(自動酸化という)ヒドロペルオキシドを生じ,この反応が連鎖的に進行して不飽和結合が切れ,その結果,低級不飽和のアルデヒド,遊離脂肪酸,ケトンなどが生成して悪臭を生ずる。魚油のように不飽和脂肪酸を多く含む油脂で起こりやすく,光,熱,金属などの存在で反応が促進される。…
※「自動酸化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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