改訂新版 世界大百科事典 「重液選別」の意味・わかりやすい解説
重液選別 (じゅうえきせんべつ)
heavy media separation
比重の異なる鉱物粒子の集りである鉱石あるいは石炭を適当な比重の液体中に浸漬すると,高比重の粒子は沈降し,低比重の粒子は浮上するので,比重差により鉱物を選別することができる。重液選別はこの原理を利用して選別する比重選別の一種で,重選ともいう。重液選別に使われる液体は重液と呼ばれる。重液選別は,鉱石や石炭を工業的な規模で選別するばかりでなく,これらの比重別成分構成を調べる目的にも使われている。この作業は浮沈分析と呼ばれている。浮沈分析のための重液としては,四塩化炭素(比重約1.6)と四臭化エタン(比重約3)の混合液のような有機液や,塩化亜鉛,塩化タリウム,ギ酸タリウムなどの高濃度水溶液が使われている。しかしこれらの重液は,高価なうえ,毒性や腐食性のため,大量使用には適していない。そこで工業規模の重液選別では重液としてもっぱら懸濁重液が使われている。懸濁重液というのは,磁鉄鉱,ケイ素鉄(フェロシリコンともいい,ケイ素と鉄の合金),石英のような高比重物質の粉末を水中に懸濁させることによって得られる,見掛け比重が1よりも大きい懸濁液のことである。これら懸濁質固体(不溶性微粉末)は重液材と呼ばれる。
重液選別は,石炭の選別法としてジグ選別と並び主要な分離技術であるばかりでなく,一般の鉱石類の選鉱においても,予備選別,すなわち無価値の岩石(脈石)の一部を微粉砕処理に持ち込む前に粗粒段階で分離・除去するための手段としても,しばしば応用されている。
重液選別のために使われる装置は重選機と呼ばれている。重選機には,重液を満たした特殊な容器の中で,粒子を重力と浮力の均衡により浮沈分離させ,分かれた粒子をバケットやかき板などによって排出するタイプのものや,サイクロンのように遠心力により粒子の選別を行うタイプのものなどがある。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報