田畑で農耕作業をするとき着用する仕事着。広義には農山漁村で用いる労働着をさし、帯、前掛け、手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)、襷(たすき)、被(かぶ)り物(もの)、雨具などの付属品をも含めていうこともある。働き着として機能性が優先され、着やすく、活動的である。また外傷からの保護や防虫を目的とし、仕立ても簡略な形となっている。このため古くから、形態上の変化がほとんどないまま現在に至っている。南北に長い日本の地理的条件から、北方系の二部式構成と、南方系の一部式形態が、東北日本と南西日本のそれぞれに用いられ、東海、近畿地方は両者併用の傾向がみられる。
二部式の上衣はコシキリ、ジバン、ハンチャ、ミジカなどとよばれ、丈は腰ぐらいまで、衽(おくみ)のつかないものが多い。両脇(わき)の裾(すそ)に10センチメートルぐらいの馬乗(うまのり)がつき、ゆとりをもたせている。一部式は脛(すね)ぐらいまでの対丈(ついたけ)の着物で、腰巻をつけ、帯を締め、脚絆、前垂れをする。袖(そで)はとくに腕の動きがよいようにくふうされ、変化に富んでいる。平袖(ひらそで)・半袖には襷(たすき)、腕貫(うでぬき)、手甲が併用された。筒袖はツッポ、テボソなどといわれる。鉄砲袖は筒袖と腕貫をあわせた型で、腕に密着させ、腕の付け根に三角の燧布(ひうちぬの)を入れ、腕の動きを楽にしている。捩袖(もじりそで)はマキソデ、ネジソデともいわれ、広袖の下端を、袖口にかけて斜めに三角形に折り上げたものである。袖付けが大きいので、下に重ね着をした場合でも、ゆとりがある。単(ひとえ)、袷(あわせ)、綿入れがあり、寒暖に応じて袖なしを外に着たり、胴着を内につける。帯は細帯、布のままのもの、裂き織などがあり、汚れ防止と前裾の乱れを防ぐ前掛けは、二布(ふたの)から、後ろまで回せる四布(よの)ものなどある。材料は耐久力のあるものが使用されるが、古くは藤(ふじ)、科(しな)(シナノキ)などの雑繊維、麻が使われ、木綿の出現後は、保温性のある木綿が主になった。染色は堅牢(けんろう)で洗うと美しさが増す藍(あい)染めが多く、紺無地か縞物(しまもの)、絣(かすり)が用いられた。
第二次世界大戦後は在来型の野良着が減り、かわってシャツブラウスにズボン、前掛けといった姿が一般的になりつつある。
[岡野和子]
…作業時における不測の災害を防ぎ,寒暑,風雨,塵埃(じんあい)などから体を保護し,また活動を容易にして作業能率を高めるなどのために用いる。日本在来の仕事着は働き着,労働着,野良着(のらぎ)などと呼ばれ伝統的な和服式であった。形も上衣と下衣に分かれた二部式が多く,それぞれの仕事の内容に適するよう独特の着方があり,一見してその職業を知ることができた。…
※「野良着」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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