改訂新版 世界大百科事典 「金の瓜」の意味・わかりやすい解説
金の瓜 (きんのうり)
昔話。〈金の茄子(なす)〉〈黄金の成る木〉とも称される。放屁(ほうひ)した罪で殿様が妃をうつぼ舟で流す。妃は懐妊していたので,流離中に男の子を生む。子どもが成長してその真相を知り,放屁しない人が植えると金のウリが実るウリ種を売りに出かける。城に行くと,殿様が放屁しない人間はないと言う。子どもは妃の放逐を問い責める。殿様は,自分の子どもであることを悟り,母子を城に招き,子どもを跡継ぎにする。少年の英知と機転そして知謀の小気味良さを主題にした物語である。この昔話は《遺老説伝》に沖縄の久高(くだか)島由来黄金の瓜子物語として収載されている。妃は,他の妃たちの讒言(ざんげん)によって放屁をとがめられると語られる場合もある。王位継承者のうつぼ舟による流離譚〈流され王〉にも深くかかわる。中国,朝鮮にも同じような伝承があるが,笑話的な色彩が濃い。この昔話が,笑話的要素を特徴としながら,児童追放モティーフを内在するものと注目する説もある。
執筆者:野村 敬子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報