所有する貨幣資産・不動産を貸付け・出資などによって提供しながら,みずからは企業活動や生産活動に直接参加せず,もっぱら貸付け・出資といった金銭的な活動から得られる利子・配当収入で暮らす人々をさす。金銭の貸借は古くから行われていたから金利生活者の存在もそれとともに古いが,18世紀以来,貸幣経済が広がり深まるとともに産業(=勤勉=インダストリー)が発展し,工業・商業中心の経済観が支配的となるなかで,年金,地代,配当,公債利子などの収入で暮らす金利生活者は寄生的・退嬰的イメージをもつにいたった。
金利生活者は〈働かずに食べていける〉人々だともいわれ,その生活ぶりは典型的にはベブレンのいう〈有閑階級〉である(《有閑階級の理論》1899)。すなわち無為,怠惰,有閑の印象を与える一方では,消費生活は奢侈(しやし),浪費的であり,金銭的活動においては計算高く,抜け目なく,詐術的でさえある。また生産活動以外の領域ではきわめて衒示的(誇示的),活動的で多忙をきわめることも多々あるとさえいわれる。レーニンは,もっぱら海外投資からの利子・配当収入に依存する国を〈金利生活者国家〉と名づけ,それを資本主義の〈腐朽〉の一つの重要な表れだとしている。またケインズは,自由主義経済において投資が減退し景気が沈滞する原因の一つに,流動性を重視した金銭的な投機に終始する傾向のある金利生活者の存在を挙げた。そして彼は,国家によって直接・間接にある程度,投資を管理することによって〈金利生活者の安楽死〉に導くことができると考えた。
近年,富の分布が比較的平均化し,金融資産が多様化(金銭の貸借がさまざまなかたちをとるようになった)する一方,貸幣価値が不安定になり下落していく状況のもとで,階級,階層としての金利生活者は〈安楽死〉したといえよう。だが収益性,安全性を賭けた金融資産の選択(ポートフォリオ・セレクション)は,キャピタル・ゲイン,キャピタル・ロスの要因も含めて,金融機関を中心に広い階層にわたって競争的に展開されており,この点からすれば,現代はいままでになく広範にそして制度上,金利生活者的であるといえる。現代においてももちろん,つましくささやかに,あるいは安穏に生活する年金,家賃・地代,退職金運用収入などによる金利生活者も存在するが,貨幣価値の変動が激しいおりから,安閑としていてはとり残されかねず,いやおうなく現代の金融的あわただしさに巻きこまれることになるのである。
執筆者:吉沢 英成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…しかし,大地主以外にも時代によってジェントルマンないしそれに近い階層と考えられた人々も多い。たとえば,16世紀以来の内科医(外科医等は別),法律家,聖職者,官僚,18世紀の貿易商,植民地地主,19世紀以降の証券保有者など,一般に土地以外の財産からあがる所得で生活をする半有閑階級(いわゆる〈金利・地代生活者(ランティエrentier)〉)やジェントルマンの相談相手となるような専門職の人々である。 したがって,あらためてジェントルマンの条件をあげるとすれば,(1)基本的に財産所得(地代を中心とする不労所得)によって生活し,(2)経済的・時間的な余裕を利用して,それぞれの時代に〈ジェントルマン的〉とみなされた特有の生活様式を維持し,(3)特有の教養をもち,(4)中央でも地方でもほぼ政権を壟断(ろうだん)した人々である。…
※「金利生活者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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