日本大百科全書(ニッポニカ) 「金字経」の意味・わかりやすい解説
金字経(こんじきょう)
こんじきょう
金泥(きんでい)によって書写された経典。七宝(しっぽう)の筆頭である金を使用して経典に荘厳(しょうごん)を加えたもので、料紙は紫紙(しし)や紺紙(こんし)が普通である。中国では、文献によると梁(りょう)時代(6世紀)につくられたとされ、唐代にもっとも隆盛した。わが国へは奈良時代にその技法が移入され、「正倉院文書」に金字紫紙経・金字紺紙経と記されている。「紫紙金字金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)」「紫紙金字華厳経(けごんきょう)」などの遺例を残す。平安時代には紺紙金字経が主流となり、多種の装飾経が制作されるにつれ、銀字経や、金銀交書(こうしょ)の経典もみられるようになる。
[久保木彰一]