貨幣とはなにか、という問題を探求する永い歴史のなかで19世紀後半から20世紀前半にかけて主張された貨幣理論で、金属主義と対峙(たいじ)するものに名目主義nominalismがある。金属主義では、「貨幣とは?」の問に対して、貨幣の素材価値、すなわち金属の価値、つまり金や銀の価値に答えを求めたのであった。それに対して名目主義の立場では、貨幣が貨幣であるのは、その機能にあって形態や実質ではないと主張した。19世紀初頭から20世紀前半にわたって貨幣に関する議論のなかでいろいろな形で金属主義、名目主義の両者が出没してきた。その後、管理通貨制度が各国に蔓延(まんえん)し、国際通貨にもIMF(国際通貨基金)体制が出現、さらに電子マネーの時代に突入しようとしている今日では、金属主義は過去のものとして忘却されるかも知れない。しかし今日、アメリカの国内通貨、たとえばドルが国際通貨であることに内在する矛盾がいつの日か爆発したときにふたたび金属主義が顧みられることになるかも知れない。
[石野 典]
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