改訂新版 世界大百科事典 「金海加羅」の意味・わかりやすい解説
金海加羅 (きんかいから)
Kimhae-Kara
朝鮮古代の加羅諸国中の有力国。別名は金官加羅,大伽耶,狗邪(くや)国,狗邪韓国,駕洛(から)国,任那(みまな)加羅,任那。現在の慶尚南道金海郡を中心とし,王都址の金海邑には多くの遺跡があり,早くから開けていた。3世紀には韓族,倭人諸国および楽浪・帯方両郡などの海上交通の要衝として栄えた。400年には南下した高句麗軍の主要な攻撃目標となる有力国であった。日本の学界では4世紀半以降に大和朝廷の朝鮮進出の基地である任那日本府がこの地におかれたとしているが,そのことを証明する文献や遺跡,遺物はまだ確認されていない。《駕洛国記》などの伝承によれば,首露王が42年に建国し,9代490年間続いたが,532年に新羅に降服したという。その開国神話は日本の天孫降臨神話の祖型とみられ,始祖王后の海洋渡航神話とともに11世紀には金海邑の邑祭とされた。始祖首露王廟,降臨地の亀旨峰,始祖王后陵などはいまも聖地となっている。6世紀前半には,新羅,百済の侵入に対抗するため,加羅諸国を糾合し,その盟主になったこともある。王宮址は明らかでないが,王都防衛の盆山城は後世も利用し,その威容をとどめている。新羅に降服したのちも,旧王族がこの地を支配し,旧王室の後裔から金庾信・文武王の母文明皇后などが出たので,672年にこの地を金官小京とし,757年に金海小京となった。その後も金海邑はこの地方の中心地であり,とくに壬辰・丁酉倭乱(文禄・慶長の役)での古戦場として名高い。
→加羅 →高霊加羅
執筆者:井上 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報