韓国(大韓民国)の詩人。本名は金英一(キムヨンイル)。普通、ハングル(朝鮮文字)で깊지하(Kimjiha)と署名しているので、どの漢字を当てはめれば適当かはさだかでない。金芝夏(キムジハ)、金芝河(キムジハ)は使用例があるようであるが、金地下(キムジハ)の意があるともいえる。1966年ソウル大学美術学科卒業。1970年5月、韓国の進歩的月刊総合雑誌『思想界』に物語詩『五賊』を載せ、財閥、国会議員、高級公務員、将軍、長官次官の五賊が国を滅ぼすと痛烈に風刺した。このため、18年間続いた『思想界』は廃刊され、金芝河も反共法で起訴された。1974年、全国民主青年学生総連盟事件により一審で死刑の判決を受けるが、やがて無期懲役に減刑され、1980年に釈放されるまで獄中にいた(2013年に再審で無罪判決)。何度もの投獄と持病の結核に苦しみながら、押さえられた者、持たぬ者の恨(ハン)と怒りの詩と戯曲をしぶとく書き続けた。彼の詩の特徴は笑いと叙情と風刺にあり、そのことばはときに卑語や隠語まで大胆に取り入れ、伝統的形式を踏まえた詩形式と相まって、民衆と詩との距離を縮めた。1970年の第一詩集『黄土』には叙情性が色濃く流れている。次いで1982年に第二詩集『金芝河詩集』が発刊されたが、ただちに発売を禁止された。1990年代に入ってからは東学思想に近い、いわゆる「生命思想」に傾斜して、ラジカルな批判精神は薄らいだ。1998年(平成10)12月に初来日した。
[大村益夫]
『姜舜訳『金芝河詩集』(1974・青木書店)』▽『李恢成訳『不帰』(1975・中央公論社)』▽『井手愚樹編・訳『金芝河作品集』(1976・青木書店)』▽『金芝河刊行委員会訳・編『苦行』(1978・中央公論社)』▽『高正子(コォ・チォンジャ)訳『金芝河生いのちを語る』(1995・協同図書サービス)』
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「キム・ジハ(金芝河)」のページをご覧ください。
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…韓国の詩人,本名は金英一。日本では金芝河とも記す。全羅南道木浦生れ。…
※「金芝河」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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