RCとも略称される。コンクリート中に鉄棒を埋め込んでつくられた複合材料で,コンクリートと鉄棒の両者が一体となって外力に抵抗する。コンクリートは,耐火性,耐久性,耐水性に富み,相当の圧縮強度を有し,構造材料としての広い用途をもっている。しかしながら本質的な欠点として引張りに対してはきわめて弱く,引張強度は,ふつう圧縮強度の7~10%程度にすぎない。一方,鉄棒は引張りに対しては強いが,曲がりやすく,圧縮力を受けるのには適していない。このような両者の欠点を互いに補うために,コンクリートに鉄棒を挿入して引張りにも圧縮にも強くしたのが鉄筋コンクリートであり,埋め込まれた鉄棒を鉄筋reinforcementと呼んでいる。
コンクリートと鉄筋という異種の材料による合成構造が成り立つのは,コンクリートと鉄筋の付着性がよいこと,コンクリート中に埋め込まれた鉄筋はさびにくく(コンクリートは本来弱アルカリ性である),長期間の耐久性があること,コンクリートと鉄筋の温度膨張係数がほぼ等しいので,温度変化に対して二次応力を生ずることなく自由に変形しうること,などの理由による。
1850年ころに,フランスのJ.L.ランボーが鉄筋コンクリートでボートをつくったのが最初といわれ,その後,67年にJ.モニエが鉄筋コンクリートの部材を特許品として博覧会に出品したのが普及の始まりとされているが,いずれにしても19世紀の半ばに発明され20世紀になって一般の構造物に使われるようになった構造様式である。ちょうどこのころ,鉄が転炉法の発明により鋼として大量に製産されるのと時代を同じくし,鉄とコンクリートの時代が形成されていくのである。フランスで発明された鉄筋コンクリート部材は,その特許がドイツに買い取られて基本的な研究が行われ,80年代の終りには,圧縮をコンクリートで,引張りを鉄筋で受け持つ鉄筋コンクリートばりの理論的計算法が発表された。これは鉄筋コンクリート部材の曲げ強さを計算している現在の式の原形である。日本で土木構造物に鉄筋コンクリートが初めて使用されたのは,1903年の琵琶湖疎水山科運河日岡トンネル東口の支間7.45mの弧形単桁橋といわれる。その後,23年の関東大震災を機にして鉄筋コンクリート構造物の耐震性,耐火性が認識され,鉄筋コンクリートの利用が広範に推し進められるきっかけとなった。
構造物設計の目的は,大なり小なりある外力に耐えうる構造をつくることにある。荷重には施工中および完成後に作用する死荷重(構造物自身の重さ),活荷重(道路橋の場合,主として自動車の重さあるいは人間の重さ。鉄道橋の場合,列車の重さ),水圧,土圧などの荷重のほか,地震の影響,温度変化,コンクリートの乾燥収縮(コンクリートが乾燥すると縮む現象)およびクリープ(一定荷重のもとで変形が進む現象)の影響などを考えなければならない。
構造物に生じている応力がその材料の強さに達するとその材料に破壊が起こるので,生ずる応力が,材料の強さを安全率で割った値以下になるようにすれば安全が確保できる。鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートが材料であるが,それぞれの信頼性が異なるので安全率が異なり,例えば長期間荷重が作用する場合,鉄筋は1.5,コンクリートは3の安全率を用いる。このような考え方による設計を許容応力度設計と呼び,日本の鉄筋コンクリート構造は,現在主としてこの方法で設計されている。これに対して,常時作用荷重に荷重係数を乗じて得られる終局荷重をいわゆる設計荷重と考えて断面力を求め,その断面力に抵抗できるような終局強度をもつ部材断面を設計する終局強度設計は,アメリカ,ソ連,ヨーロッパなど多くの国で採用されており,破壊に対する安全さが明確な点で優れているので,日本でも近い将来この設計が主流になっていくと考えられる。
土木構造物において,もっとも一般的な鉄筋コンクリート構造物は橋である。鉄筋コンクリートでできている橋を構造形式によって分類すると,スラブ橋,桁橋およびラーメン橋など,荷重が作用するとそれに対して曲げ抵抗で支える構造形式と,アーチ橋のように,荷重が作用すると荷重を部材内部で圧縮力にして支える構造形式の2種に分けられ,このなかで圧倒的に多く用いられるのはスラブ橋および桁橋である。建築物の場合は,部屋は四角で開口部分が大きいほうが使いやすいので,鉄筋コンクリートのはり,柱,床からなるラーメン造がもっとも一般的であるが,このほか,大きな開口部を必要としない建物や,大きな部屋がいらない場合には床スラブと壁だけで荷重を支えることができる壁式鉄筋コンクリート造,倉庫や車庫など積載荷重が大きい建物では床スラブとこれを直接支持する柱とで構成する構造(フラットスラブ構造という)も用いられ,また屋根は平面でなくてもよいので,大きな空間を覆うのに力学的に有利な曲面を用いたシェル構造もある。
→コンクリート →プレストレストコンクリート
執筆者:長滝 重義
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…コンクリートが硬化するまでは水を静止させておかなければならない。繊維補強コンクリートfiber reinforced concreteコンクリートにガラス質,あるいは鋼製の繊維を混入したもの。鋼繊維補強コンクリートとガラス繊維補強コンクリートがある。…
…オーストリアのO.ワーグナーは《近代建築Moderne Architektur》(1895)を著して近代運動の先駆となり,その影響下にベーレンス,ロース,J.ホフマンらを輩出した。またフランスではA.ペレが古典主義の造形を基調にしたコンクリート造建築をつくり,鉄筋コンクリート技術者エンヌビクFrançois HennebiqueやボドAnatole de Baudotらによる試みをさらに発展させた。都市のイメージに対しても,1918年T.ガルニエが〈工業都市〉案を提出し,中世都市をモデルとする都市理念を払拭した。…
…しかし構造用材料として本格的に用いられるようになったのは,18世紀の終りに水硬性セメントが発明されてコンクリートが石材に代りうる強さを獲得してからのことである。さらに19世紀以降は補強材としての鋼材を用いた鉄筋コンクリートの出現や,水とセメントとの比率の研究,コンクリートの性質を向上させる各種の混和材料の発明,新しい施工法の開発などとあいまって,土木・建築用材料として飛躍的な発展を遂げ今日に至っている。日本にコンクリート技術が導入されたのは1900年前後であるが,欧米諸国ではコンクリートの各種の方面への利用の実現性を図っていた時期とほぼ一致していたこと,また関東大震災により従来の煉瓦造が壊滅的な被害を受け,鉄筋コンクリート構造の耐震性,耐火性が認識されたことなどからコンクリートの利用が広範に推し進められた。…
…主要骨組みを鉄筋コンクリートで構成する構造を鉄筋コンクリート造reinforced concrete constructionといい,鉄筋コンクリート造による建築を鉄筋コンクリート造建築と呼ぶ。RC造建築ともいう。…
※「鉄筋コンクリート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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