帯の留金具の一つ。尾錠(びじよう)ともいう。金具の一端に鉤をつくり,それに帯の端をかける帯鉤(たいこう)のような留め方のものと,帯を金具の裏から抜き出し,帯の中央の穴に金具の棒をさしこんで留めるものとがある。鉸具の名称はこの留金具の総称として使われることもあるが,一般には後者を指す。金属棒を馬蹄形あるいは長方形にまげて,下端に回転自在の横棒をさし,その中央に刺金(さすが)を回転するようにつけたものが通常の形である。これは枠の1ヵ所に小突起をつけ,他方に帯をかける台形の金具をつけた鳥形金具から発達したものである。鳥形金具の起源は前1千年紀初めにカフカス地方にあり,ユーラシア大陸中北部で広く使用された。それが紀元前後の頃に刺金付鉸具に改良されて現在にいたっている。日本に普及したのは5世紀以降である。
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…【山本 忠尚】
[中国,日本]
戦国時代から漢代にかけての中国では,匈奴,鮮卑などが盛んに用い,騎馬・褶袴とともに漢人の風俗にとりいれられた。匈奴の鉸具(かこ)はスキタイの形式をとり,一般に左右相似形の透し彫のある長方形を呈し,一方の鉸具につけた鉤を一方の鉸具にあけた孔にとおして固定する帯鉤である。漢王朝は周辺の胡族の王および有力豪族に,馬蹄形の金銀打出し文様のある帯の一端のみに鉸具がつく腰帯を服属の証として賜与した。…
※「鉸具」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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