男性用の革帯につける帯留めの金具。中国の春秋戦国時代から後漢代にかけて広く用いられた。基本的な構造はスプーン形の鋳造品で,細い棒状の一端を表側へ鉤(かぎ)状に折り曲げ,幅の広い部分の裏側にボタン状の突起をつくりだしたもの。戦国時代の銅俑や秦始皇陵兵馬俑坑の戦士俑によって使用法がわかる。革帯の一端に一字形の切込みをいれてボタン状突起をさしこみ,帯のもう一端に小円孔をあけて鉤状の部分をひっかけ,腹の中央でとめるのである。帯鉤は装身具でもあり,形は大小さまざま,棒状のものや板状のもの,無文の実用一点張りのものから豪華な文様をほどこすものなど多種多様である。装飾をほどこすとき,鉤の部分を怪獣の頭にあて,それ以外の表面を幾何学文や浮彫風の奇怪な禽獣文で飾る。戦国時代後期に発達のピークがあり,金銀や色とりどりの玉石を象嵌したり,金銀を貼りつけたりするものが多く,青銅のほか鉄,玉などでつくるものも少なくない。
前1世紀ころに比定されている韓国の永川漁隠洞遺跡からは,馬と虎をかたどった青銅帯鉤が出土している。この場合,文様が中国北方のオルドス文化の系統に属し,鉤をかけるのが革帯の端ではなく,帯端にとりつけた青銅環であることからすると,中国から伝わったものではないことになる。日本では帯鉤の発見例は皆無に近いが,5世紀の岡山県榊山古墳から青銅製の馬形帯鉤が出土している。その形は漁隠洞遺跡の系統に属し,朝鮮半島からもたらされた可能性がある。
→帯金具
執筆者:町田 章
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…鉄器時代初期のハルシュタット文化A期では,円盤形の先に環を付したものと,小型の円盤の一端に舌をつけてこの先を鉤状に曲げた組合せが普及している。これらは帯鉤(たいこう)の一種である。帯金具とは皮革ないし布製の帯の表面につけた金・銀あるいは金銅製の飾金具で,一般に方形をなし,それに透し彫または打出しの図文をほどこしてある。…
※「帯鉤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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