知恵蔵 「銀河3号」の解説
銀河3号
北朝鮮にとって、米国も射程に入る長距離弾道ミサイルは、軍事圧力で相手国に譲歩を迫る「瀬戸際外交」の最大の交渉カードとなる。1980年代に開発を始めて以来、核開発とともに北朝鮮の宿願と言えるが、2006年7月の「テポドン2号」(発射直後に故障)、09年4月の「銀河2号」(軌道投入前に落下)に続く3回連続の失敗となり、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も中断を余儀なくされる結果になった。ただし、北朝鮮はいずれも軍事目的であることを否定しており、今回の「銀河3号」も、人工衛星「光明星3号」の運搬用ロケットと主張している。
ミサイル発射は金日成(キム・イルソン)生誕100年の祝賀と発足間もない金正恩(キム・ジョンウン)体制の威信強化も兼ねていた。それだけに、実験失敗は、金正日(キム・ジョンイル)の「先軍政治」継承を掲げ、国民に「強い指導者」をアピールする金正恩の船出に大きな打撃となった。指導部の求心力低下に加え、今後の軍の発言力低下を指摘する声もある。
また、米国や周辺諸国の警告を無視しての発射強行は、従来通りとはいえ、北朝鮮の国際的な孤立を更に深めることとなった。発射直後、主要8カ国(G8)の外相が北朝鮮への非難声明を出し、国連安全保障理事会も発射3日後の4月16日、これまでより一歩踏み込み、「制裁強化」を盛り込んだ非難声明を採択している。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報