鍵取(読み)かぎとり

改訂新版 世界大百科事典 「鍵取」の意味・わかりやすい解説

鍵取 (かぎとり)

本来は倉庫の鍵を預かり出納にあたる役。鎰取とも書く。律令では中務省に大少の典鑰(てんやく)が各2人おかれ,〈かぎのつかさ〉〈かいとり〉と読まれた。また,国にも徭丁として鎰取がいたし,僧綱所にもいた。中世には宇佐八幡宮,肥前河上社,筑前観世音寺等の社寺にも鎰取がいた。浄土真宗では開山御厨子(みずし)の開閉にあたる鎰取を勤番とも呼んだ。荘園でも高野山領備後大田荘にも荘官の一員として鎰取がみられる。近世では郷倉の管理にあたる者を鎰取と呼んだ。現在では神社の鍵を預かる地位にある人を鍵取と呼ぶが,氏子総代世話人神職なども鍵取のうちとするところもある。鍵番,鍵主,鍵持,鍵元,鍵守と呼ばれるのも鍵取とほぼ同じ役割を神社祭礼において果たしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鍵取」の意味・わかりやすい解説

鍵取
かぎとり

村落旧家などで、鎮守社殿の鍵を預かって祭りのときに扉を開閉したり、賽銭(さいせん)の保管をしたりする役の者をいう。鍵預り、鍵持ちなどともいう。古代では、中務(なかつかさ)省に属して、庫蔵の鍵の出納をつかさどる職たる大典鎰(てんやく)・少典鎰の別名が「鎰(かぎ)取」であった。中世では、社寺の厨子(ずし)の鍵を預かる役、および社寺領荘園(しょうえん)の倉庫の鍵を預かる役が「鎰取」であった。近世には、神社の役のほかに、村役人のなかで郷倉(ごうぐら)の鍵を預かる者のことをもいったりした。

[萩原龍夫]

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