日本大百科全書(ニッポニカ) 「カドミウム中毒」の意味・わかりやすい解説
カドミウム中毒
かどみうむちゅうどく
カドミウムのフューム(煙霧状粉末)を吸入するか、または経口的に摂取することによっておこる中毒をいう。以下、カドミウムの吸入および経口摂取時における毒性について述べる。
[重田定義]
吸入毒性
酸化カドミウムのフュームを大量に吸入すると急性中毒をおこす。初めは鼻やのどの痛み、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が現れ、その後に胸痛、粘液性の痰(たん)を伴う強い咳(せき)、呼吸困難とチアノーゼなどの肺水腫(すいしゅ)の症状がおこる。この肺の症状が早く出るようなときには生命の危険もある。死に至らない場合は3日(72時間)以内に回復し始め、7~10日で気管や気管支、肺の血管周囲に線維化がみられる。また、カドミウムのフュームを長期間吸入することにより生ずる慢性中毒としては、肺気腫、胃腸障害、腎(じん)障害などがあり、とくに分子量2~3万の低分子タンパク質が尿中に出現することが特徴である。
[重田定義]
経口毒性
大量に摂取すると、短時間で嘔吐と下痢を伴う急性胃腸炎がおこる。また、経口摂取が続くと、胃腸炎のほかに、頭痛、口中の金属味、体重減少、肝障害、腎障害がおこる。なお、長期にわたってカドミウムを摂取することが基盤となっておこった疾患に、公害病として知られるイタイイタイ病がある。カドミウムの労働衛生上の許容濃度は、1立方メートル中0.1ミリグラムである。
[重田定義]