長期停滞(読み)ちょうきていたい(英語表記)secular stagnation

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

通常の景気循環の不況局面を越えた、より長期的、趨勢(すうせい)的な不況状態のことをいう。とりわけ1930年代の大不況に際して多くの経済学者によって議論された問題である。アメリカのA・H・ハンセンは、長期停滞がもたらされる原因を資本主義経済の発展と、それに続く成熟化に求めた。すなわち、貯蓄・投資の中長期的なバランスからみると、経済の発展につれて貯蓄は増加していくのに対して、投資誘因である人口増加、フロンティア(新領土と新資源の発見および開発)、技術革新などが衰えて投資機会が減少する結果、投資が貯蓄を十分に吸収しえないために慢性的な不況状態が持続すると考え、このような長期停滞への対応策として、政府の積極的な支出の必要性を主張した。また、このような人口増加の減少、フロンティアの停滞などの経済外的・外生的要因を長期停滞の原因とするハンセンに対して、独占の形成が資本蓄積に与える影響や過剰な資本蓄積などの経済内的要因を重視するJ・シュタインドルらの内生説があるが、このような長期停滞論は、とくに第二次世界大戦後1960年代までの世界各国の高い経済成長率によって示されるように、かならずしも妥当しなかった。しかし、1970年代の2回にわたる石油危機の影響もあり、各国の経済成長率が低下したことをめぐって新たな形態をとった長期停滞論が生まれてくる可能性は否定できないであろう。[羽鳥 茂]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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