家庭医学館 「門脈血栓症」の解説
もんみゃくけっせんしょう【門脈血栓症 Portal Vein Thrombosis】
門脈系の血管が、血液のかたまりによって閉塞(へいそく)した状態です。閉塞をおこした部位によって肝内性(かんないせい)と肝外性(かんがいせい)とに分けられます。肝外性の代表的なものは、肝臓に入る手前の門脈本幹(もんみゃくほんかん)に血栓(けっせん)が形成された場合です。
年齢を問わずおこりますが、小児が大半を占めます。原因として、新生児期に感染しておこる臍静脈炎(さいじょうみゃくえん)による門脈幹(もんみゃくかん)の血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)が想定されています。また、年長児では虫垂炎(ちゅうすいえん)や腹膜炎(ふくまくえん)が、成人では胆石症(たんせきしょう)の手術後におこる静脈炎や腹部の外傷が原因にあげられますが、詳細は不明の場合もあります。
[症状]
門脈が閉塞する結果、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)(「門脈圧亢進症」)と同様の症状、すなわち、食道や胃の病変に付随する消化管出血(しょうかかんしゅっけつ)(吐血(とけつ)、下血(げけつ))、腹水(ふくすい)による腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)などが現われます。小児は吐血や下血で発症することが多いといわれています。ほかに、循環障害(じゅんかんしょうがい)によるうっ血性脾腫(けつせいひしゅ)もみられます。
[検査と診断]
肝硬変(かんこうへん)でみられる門脈圧亢進症とは異なり、肝臓(かんぞう)自体の障害は比較的軽度なため、血液検査ではほとんど異常はみられません。したがって、検査と診断は肝硬変との鑑別とともに、腹部超音波検査(ふくぶちょうおんぱけんさ)、CT検査、門脈系血管造影(もんみゃくけいけっかんぞうえい)によって門脈内の血栓の存在を確かめることがたいせつになります。
[治療]
食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)または胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)がほぼ必発であるため、それに対する対策が治療の主体になります。閉塞部位の周辺に新たな血流路(海綿状血管増生(かいめんじょうけっかんぞうせい))が生じて症状が軽快することがありますが、静脈瘤の破裂(はれつ)による出血がおこる危険が多いためです。
外科的に静脈瘤を切除する方法と、内視鏡(ないしきょう)を使用しての硬化療法(こうかりょうほう)または結紮術(けっさつじゅつ)が行なわれます(「門脈圧亢進症」の治療)。
[日常生活の注意]
慢性に経過する病気のため、肝機能が保たれていれば日常生活はふつうに送れますが、肝臓に栄養を運ぶ主要な血管である門脈が閉塞するのですから、年齢とともに肝不全(かんふぜん)の徴候(ちょうこう)が出てきます。その場合は慢性肝炎(まんせいかんえん)などと同様、医師の指導に従い、注意深い養生が必要となります。