日本大百科全書(ニッポニカ) 「開放体系・封鎖体系」の意味・わかりやすい解説
開放体系・封鎖体系
かいほうたいけいふうさたいけい
open system,closed system
経済分析を行う際に、国際間の取引を考慮に入れた場合の経済体系を開放体系といい、一国内だけに対象を絞った場合の経済体系を封鎖体系という。一国の経済は、貿易や資本の移動を通じて外国の経済とつながりをもっている。たとえば、外国で生産された石油が日本に輸入され、日本の自動車が海外に販売される。あるいは外国人が日本に観光旅行にきたり、日本から外国へ資金供与が行われたりする。しかし、一国の経済を分析する際には、とりあえずこのような対外的な側面を切り離して考察する封鎖体系のほうが、その国の経済の問題を明確にするのに便利である。それに対して、対外的な取引をも考慮に入れて分析を進める開放体系では、国際取引と国内取引とで異なった原理が働くため、一国の経済を均衡させる条件や国民所得の循環などが、より複雑になる。たとえば、開放体系では国民所得の流れは一部は輸入に漏出するから、封鎖体系の場合に比べて乗数効果は小さくなる。また、固定為替(かわせ)相場制のもとでは、一国の経済政策に国際収支の均衡というもう一つの目標が付け加えられるので、複数の政策目標を達成するための政策手段の選択が封鎖体系に比べてむずかしくなる。ことに資本の国際間の移動性が高い場合には、資金の自由な移動によって国内の金融政策の効果が削減されて、一国独自の政策を行う自由度が狭められるなどの問題が生じるのである。
[志田 明]