花の咲く時期,開花期を予測すること。開花は植物にとっては,栄養生長から生殖生長への転換を意味しており,開花期前後には不順な天候の影響を受けやすい。発芽から開花までの期間は,積算温度や日長に規制されながらも種や品種によってほぼ定まっている。登熟にも一定の気象量を必要とするので,穀実の収穫を目的とする一年生農作物では,生産を最大にするためには好適な開花期を定め,作物が生育期間の気象量を十分に使えることが望ましい。開花予想には,発育の状態と温度が主因子として,ときに日長などが副因子として用いられる。農作業適期の決定,寒冷地における冷害の被害量の推定,果樹の交配,移動養蜂,観光計画などに予想が活用される。地図上の等開花日線は,俗に花前線と呼ばれる。気象庁では規定種目としてウメ,ツバキ,タンポポ,ソメイヨシノ,ヤマツツジ,ノダフジ,ヤマハギ,アジサイ,ススキの9種の,選択種目としてスイセンなど16種の開花日を観測している。ソメイヨシノを対象にしたサクラ前線は広く知られている。サクラ前線は,平年には3月25日ごろ大分,四国南部に上陸し,関東南部を3月末ごろ通過し,漸次北上して4月末に津軽海峡を渡り,北東進して5月中旬に北海道東部から千島列島に抜ける。緯度1°,経度5°(東方へ),高度400フィート(約122m)ごとに平均4日で移動するというアメリカのA.D.ホプキンズの生物気候の法則は,地勢や海流の相違によって,日本では完全にはあてはまらない。
→生物季節
執筆者:久保 祐雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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