生物季節(読み)セイブツキセツ

デジタル大辞泉 「生物季節」の意味・読み・例文・類語

せいぶつ‐きせつ【生物季節】

生物活動にみられる季節現象開花落葉や鳥の渡り・虫の鳴き始めなど。→不時現象生物季節観測

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「生物季節」の意味・読み・例文・類語

せいぶつ‐きせつ【生物季節】

  1. 〘 名詞 〙 気候の変化に対応してみられる生物体の現象の変化や進行。植物の開花・結実・落葉や、動物の休眠・渡り・発情など。生物季節を研究する学問を生物季節学、特に開花の場合は花暦学という。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生物季節」の意味・わかりやすい解説

生物季節
せいぶつきせつ

生物の種々の活動にみられる季節による変動をいう。開花、発芽、結実などにみられる植物季節、渡り、休眠、発情などにみられる動物季節、人間生活の変化として現れる生活季節が含まれる。

 これらの季節的現象は、生物の生活環境、たとえば気候、日長などが季節によって変動することにより引き起こされることが多い。したがって、生物季節から特定の地域の気象環境を総合的に把握できる。たとえば、ソメイヨシノの開花は平均気温が10℃に達すると始まるため、開花を観測することによって各地の気温を推測することができる。生物季節による気象環境の推測は、精密な気象観測手段のなかった時代から今日に至るまで、農業や林業産物の管理などに広く利用されている。種々の植物の開花や結実の時期を暦上に並べた花暦(はなごよみ)が、古くから農作業などの指標として用いられていることは、その一例である。一方、日長の支配を受ける生物季節、たとえばキクの開花では、人工的に日照時間を変えて開花時期を調節することができる。真冬にみられるキクの花は秋ギク寒ギクの開花を電灯照明で抑制したものである。

 環境の直接の影響によるのではなく、生物の体内に組み込まれた約1年周期の生物時計が生物季節を支配している例も、小形哺乳(ほにゅう)類の冬眠や夏眠、鳥類の渡りや繁殖などで知られている。

[佐藤 哲]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「生物季節」の意味・わかりやすい解説

生物季節 (せいぶつきせつ)

動植物に関係の深い季節現象をいう。広義には農事・生活季節もこれに含める。動物については渡り鳥去来期,鳥の初鳴日,昆虫や爬虫類出現退行期など,植物については,発芽,開花,満開,結実,紅葉,落葉の期日などがそのおもな観測項目である。これらの期日を用いて地図上に等期日線を引いて季節の進行を容易に知ることができる。開花日の北上や紅葉日の南下などは,気象学の前線になぞらえて,生物前線,また個々にサクラ前線とか紅葉前線と呼んで一般に親しまれている。生物季節を検討することにより,季節予報の基礎資料を得ることができるし,農作業の適期の決定に役立てることができる。また,近年は都市化や公害により自然の破壊が進行しているが,長年にわたる生物季節の資料を比較することで,環境の変化をある程度明らかにできる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「生物季節」の意味・わかりやすい解説

生物季節【せいぶつきせつ】

生物界に見られる季節現象。植物の発芽,開花,紅葉,落葉,結実などを植物季節,渡り鳥の渡去来,昆虫類・爬虫(はちゅう)類の初見などを動物季節,作物の播種(はしゅ),収穫などを作物季節という。植物季節の遅速と緯度,高度,経度との関係を定式化したものは生物気候の法則と呼ばれる。
→関連項目季節季節学農業気象

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「生物季節」の解説

生物季節

季節の変化によって鳥がさえずり花が咲くといったような、動植物が示す季節現象をいい、広義には農事・生活季節も含める。植物の発芽や開花、紅(黄)葉、落葉などの日を毎年同じ場所で標本を決めて観測することを植物季節観測、動物の出現や渡り鳥の去来、鳴き始めなどを観測することを動物季節観測と呼び、季節の進み・遅れや農作業の適期などを知るのに役立つ。桜の開花日、カエデの紅葉日の同じ地点を結んだ線が、それぞれ桜前線、紅葉前線。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生物季節」の意味・わかりやすい解説

生物季節
せいぶつきせつ
phenology

気温や日照など季節の変化に反応して動植物が示す現象をいう。発芽や開花,紅葉,落葉などを植物季節,渡り鳥の去来や発情,産卵,鳥の鳴き始めなどを動物季節と呼び,それらを観測することで,気象を並年と比較したり,農作業に役立てたりしている。桜の咲き具合から季節の進み具合を推測する桜前線,同様の紅葉前線などが一般的。広義には人間生活にかかわる農事・生活季節も含まれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android