生物の種々の活動にみられる季節による変動をいう。開花、発芽、結実などにみられる植物季節、渡り、休眠、発情などにみられる動物季節、人間生活の変化として現れる生活季節が含まれる。
これらの季節的現象は、生物の生活環境、たとえば気候、日長などが季節によって変動することにより引き起こされることが多い。したがって、生物季節から特定の地域の気象環境を総合的に把握できる。たとえば、ソメイヨシノの開花は平均気温が10℃に達すると始まるため、開花を観測することによって各地の気温を推測することができる。生物季節による気象環境の推測は、精密な気象観測手段のなかった時代から今日に至るまで、農業や林業産物の管理などに広く利用されている。種々の植物の開花や結実の時期を暦上に並べた花暦(はなごよみ)が、古くから農作業などの指標として用いられていることは、その一例である。一方、日長の支配を受ける生物季節、たとえばキクの開花では、人工的に日照時間を変えて開花時期を調節することができる。真冬にみられるキクの花は秋ギクや寒ギクの開花を電灯照明で抑制したものである。
環境の直接の影響によるのではなく、生物の体内に組み込まれた約1年周期の生物時計が生物季節を支配している例も、小形哺乳(ほにゅう)類の冬眠や夏眠、鳥類の渡りや繁殖などで知られている。
[佐藤 哲]
動植物に関係の深い季節現象をいう。広義には農事・生活季節もこれに含める。動物については渡り鳥の去来期,鳥の初鳴日,昆虫や爬虫類の出現・退行期など,植物については,発芽,開花,満開,結実,紅葉,落葉の期日などがそのおもな観測項目である。これらの期日を用いて地図上に等期日線を引いて季節の進行を容易に知ることができる。開花日の北上や紅葉日の南下などは,気象学の前線になぞらえて,生物前線,また個々にサクラ前線とか紅葉前線と呼んで一般に親しまれている。生物季節を検討することにより,季節予報の基礎資料を得ることができるし,農作業の適期の決定に役立てることができる。また,近年は都市化や公害により自然の破壊が進行しているが,長年にわたる生物季節の資料を比較することで,環境の変化をある程度明らかにできる。
執筆者:前島 郁雄
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(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
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