改訂新版 世界大百科事典 「間欠伝動装置」の意味・わかりやすい解説
間欠伝動装置 (かんけつでんどうそうち)
電動機や各種のエンジンなどの原動機から取り出される動力は,往復運動にしろ回転運動にしろ連続的な運動であるが,これを断続的な運動に変換して利用したい場合もしばしばある。このようなとき,動力が与えられる部分は連続した運動をしているが,この部分によって駆動される部分が動いたり停止したりするような機構を間欠運動機構intermittent motion mechanismと呼び,そのような機構が組み込まれている装置を間欠伝動装置と呼ぶ。非常に多くの種類があるが,ここでは基本的なものに限って説明する。
図1に示したのは爪(つめ)(ラチェット)と爪車を利用したものである。ハンドルCを左右に往復運動させると爪車Aは間欠的に反時計回りに回転する。Cが右方へ動くときは爪BはAの上を滑るようになっているが,このときには右方にある爪B′が,Aの回転を止めている。逆にCが左へ動くときは爪B′はAの上を滑り,爪BがAを押すのでAは回転する。このような爪と爪車を利用した装置を爪車装置といい,この原理は工作機械などで工作物を少しずつ動かすのに応用されている。図2はピンとゼネバ歯車と呼ばれる特殊な歯車を利用したものである。ピンが歯車の溝に入っている間だけ歯車は回転するが,ピンが溝から抜け出すと,ピンが次の溝に入るまで歯車は動けないようになっている。この原理は,映写機でフィルムを1コマずつ送る装置などにも使われており,間欠的な直線運動を実現する際も利用される。また,ゼネバ歯車と原理的には同じものとして,部分的に歯のない歯車を用いて間欠回転伝動を行うものもある。
歯車や爪を利用した場合は,騒音が出る可能性があるので,静かに間欠伝動を行うくふうもされている。その一つが固体摩擦の利用である。図3-aにおいて,Dは送り爪で,円板Gの縁に接している。爪の形は,爪の軸からの距離がしだいに大きくなるようにしてあるので,爪が右に送られるときは円板の縁に食い込むような形となり,摩擦によって円板が右回りに回される。ハンドルを左に動かしたときは円板の縁をこすりながら左へいくが,このとき,もう一つの爪Fが円板に接しているので円板は左へは回らない。また,図3-bは鋼球を利用したものである。円環Aに軸O回りに往復回転運動を与えると,右へ回ったときは鋼球Cがすきまに食い込んで板Bを回転させるが,Aが左へ回るときは鋼球が転がり出てBは回転しない。この装置はフリーホイールと呼ばれ,自転車などに使われている。
間欠伝動装置には,このほか,カムを利用したもの,リンク装置を利用したものなどもあり,自動機械での品物の移動や位置決めなどに幅広く利用されている。
執筆者:三浦 宏文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報