関東往還記(読み)かんとうおうかんき

改訂新版 世界大百科事典 「関東往還記」の意味・わかりやすい解説

関東往還記 (かんとうおうかんき)

大和国西大寺律僧叡尊(えいそん)が1262年(弘長2)北条時頼・実時に招かれて鎌倉下向した時の日記。筆録者は従者性海。金沢文庫に伝わった古写本(尊経閣文庫現蔵,《史籍雑纂》所収)は,首尾を欠いていたが,その後金沢文庫から欠如している部分が発見され,関靖編によって《校訂増補関東往還記》として刊行された(1934)。この日記は《吾妻鏡》の欠如部分を補う貴重な史料である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関東往還記」の意味・わかりやすい解説

関東往還記
かんとうおうかんき

奈良西大寺の叡尊(えいぞん)が、1262年(弘長2)の2月から8月にかけて鎌倉に下向した際の活動を、弟子の性海(しょうかい)が綴(つづ)った記録。これより先、金沢実時(かねさわさねとき)は見阿(けんあ)や叡尊の弟子の定舜(じょうしゅん)を使者として叡尊に東国布教を勧めていたが、叡尊はこれを応諾して鎌倉に下向。北条時頼(ときより)や実時をはじめとする御家人(ごけにん)の帰依(きえ)を得ると同時に、弟子の盛遍、忍性(にんしょう)、頼玄(らいげん)らをして鎌倉の貧民に食を施した。奈良国立文化財研究所(現、奈良文化財研究所)編『西大寺叡尊伝記集成』(1956)所収。

[細川涼一]

『奈良国立文化財研究所編『西大寺叡尊伝記集成』(1956・大谷出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関東往還記」の意味・わかりやすい解説

関東往還記
かんとうおうかんき

紀行文。1巻。西大寺中興の祖叡尊思円著。弘長2 (1262) 年,叡尊が鎌倉幕府の執権北条時頼の招きを受け,人々に菩薩戒を授け,律 (仏教禁戒) を講じるため,半年間鎌倉へ下向した際の記録。『吾妻鏡』の欠を補い,鎌倉幕府の実情を知るうえでの好史料。

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