阿弥号(読み)あみごう

改訂新版 世界大百科事典 「阿弥号」の意味・わかりやすい解説

阿弥号 (あみごう)

阿弥陀仏を信仰する人々が用いた法名の一種。つぶさには阿弥陀仏号(または阿弥陀仏名),略して阿弥号,阿号という。空阿弥陀仏,観阿弥,向阿などと称し,浄土宗や時宗では法号の上に用いている。法号として阿弥陀仏名を用いることは11世紀はじめにみられるが,空也の流れをくむ〈阿弥陀聖〉たちの間から名のられたようである。俗人が使用するようになったのは俊乗房重源ちようげん)が1183年(寿永2)大仏再建勧進の手段として,貴賤にひろく付与してからのことである。《黒谷源空上人伝》によれば,重源は,閻魔の庁において道俗が名を聞かれたとき,阿弥陀仏の名号が唱えられるように,法名に阿弥陀仏号をとりいれたという。13~14世紀には武士農民・商工業者・芸能者などの間でひろく用いられ,中世文書に頻出している。とくに室町時代の芸能者は阿弥号を称していた。彼らのすべてが時宗の徒とはいえないが,多くは浄土教信者であった。
阿弥派
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「阿弥号」の解説

阿弥号
あみごう

阿号とも。阿弥陀号の略。中世の浄土教の遁世者に与えられた称号南無阿弥陀仏・世阿弥・法阿などと称する。もともとは法号の上に称されるものだったが,11世紀以降法号そのものとして用いられた。俊乗房重源(ちょうげん)が大仏勧進の手段として広く人々に阿弥号を与えてからは,遁世者ばかりでなく,公家武家を含む俗人にまで広まった。浄土宗や時宗教団に属する僧俗に多く,時宗の遊行上人(ゆぎょうしょうにん)は代々「他阿弥陀仏」と称した。南北朝期以降になると茶人や能役者などに阿弥号を称する者も多く,将軍同朋衆(どうぼうしゅう)や御伽衆(おとぎしゅう)に対してもつけられた。

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世界大百科事典(旧版)内の阿弥号の言及

【同朋衆】より

…以後,つねに将軍に近侍して動くうちに使者として文書を運び届けたり,将軍への対面者を取り次いだり,将軍の趣味の世界にかかわったりすることとなって,しだいにこれが職制化の途をたどったものらしい。同朋衆の個人名はすべて漢字1字に〈阿弥(あみ)〉の2字のついた〈阿弥号〉であるが,幕府関係者で阿弥号をもつものがすべて同朋衆であったとはかぎらない。また,阿弥号を名のる習慣は時宗のものであることから,同朋衆と時宗との関係の深さが考えられるが,同朋衆すべてを時宗の信徒とみなすのは妥当ではない。…

※「阿弥号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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