室町・江戸時代、将軍や大名に近侍して雑事や諸芸能をつかさどった法体(ほったい)の者。単に同朋ともいい、また童坊とも書く。室町時代には、将軍・大名の側近にはべって芸能、茶事、雑役を勤めた。いずれも僧体で、阿弥(あみ)号を称した。将軍足利義満(あしかがよしみつ)に仕えた観(かん)阿弥・世(ぜ)阿弥の父子は猿楽能(さるがくのう)の大成者として有名で、将軍義政(よしまさ)に仕えた能(のう)阿弥、芸(げい)阿弥、相(そう)阿弥の3代(三阿弥)は水墨画や茶の名手で唐物(からもの)の鑑定にも名をなし、文阿弥(もんあみ)、台阿弥(だいあみ)は「たてはな」の名手として知られる。これら同朋衆は、阿弥号を称するところから、時宗(じしゅう)との密接な関係もあったと考えられている。江戸時代には、幕府の役職の一つとなり、若年寄の支配に属した。同朋頭(200石高)4人の下に阿弥号を称する同朋衆(100俵高、十人扶持(ぶち))、坊主(ぼうず)があり、頭は営中の給事、将軍外出の供奉(ぐぶ)、老中・若年寄の用を勤め、同朋・坊主は営中で大名の案内、更衣、刀剣の上げ下げ、茶・弁当の世話などを担当した。このほか、念仏信仰者(とくに真宗)の間で、信心を同じくする仲間同志を相互に同朋とよびあった。
[広神 清]
室町時代に足利将軍家に仕え,歴代将軍の殿中にはべって,さまざまの雑用や美術工芸品の鑑定,諸芸能に従事した僧体の特別技能者たちをいう。〈同朋〉の語は,もともと仏教界に発したとみられ,〈友〉と同義に用いられるとともに,禅寺で輿舁(こしかき)の任務についた〈力者(りきしや)〉をさしたりしたが,やがて武家社会でも用いられるようになり,上記の諸任務に従う同朋衆のさきがけをなす人々の呼称となったらしい。足利将軍家に仕えた同朋衆のおこりについては,ふつう3代将軍足利義満の幼時に細川頼之(よりゆき)がはからって法師6人を選定し,これを〈童坊(どうぼう)〉などと名づけ,異風の服装で座興をもよおさせ,義満の無聊(ぶりよう)をなぐさめたのが始まりだという。以後,つねに将軍に近侍して動くうちに使者として文書を運び届けたり,将軍への対面者を取り次いだり,将軍の趣味の世界にかかわったりすることとなって,しだいにこれが職制化の途をたどったものらしい。同朋衆の個人名はすべて漢字1字に〈阿弥(あみ)〉の2字のついた〈阿弥号〉であるが,幕府関係者で阿弥号をもつものがすべて同朋衆であったとはかぎらない。また,阿弥号を名のる習慣は時宗のものであることから,同朋衆と時宗との関係の深さが考えられるが,同朋衆すべてを時宗の信徒とみなすのは妥当ではない。足利将軍家歴代に仕えた同朋衆のなかでは,〈三阿弥(さんあみ)〉と総称された能阿弥,芸阿弥,相阿弥の親子3代がとくに名高い(阿弥派)。なお,同朋は将軍家にならって諸大名家にも置かれたし,江戸時代には幕府の職制にくわえられ,若年寄の配下で同朋頭のもとに殿中における雑用に従事した。
執筆者:横井 清
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室町将軍に仕え,雑事や諸芸能にたずさわった僧体の者。阿弥(あみ)号をもつ。戦陣に従った時宗の徒(時衆)の系譜を引くとされるが,同朋衆は時衆とは限らない。取次や使者などの将軍身辺の雑務から,将軍家所蔵の財物の鑑定・管理・出納,絵の製作や座敷飾などの特殊技能まで職掌は多様。将軍足利義政の頃活躍がめだち,能阿弥・芸阿弥・相阿弥らが著名。同名の相承,同名異人などの場合があり,注意が必要。
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…すなわち,ばさら大名たちにもてはやされた唐物はますます珍重され,足利義教より足利義政にいたる室町時代中期には足利幕府によって多数の唐物名物が集められ,のちに〈東山御物〉と呼ばれるコレクションが生まれた。唐物を飾るための棚を設けた書院造の会所では,唐物を管理し鑑定し,さらに飾りつける専門家の同朋衆(どうぼうしゆう)があらわれ,能阿弥,相阿弥などが活躍した。彼らのこれら名物に関する記録として《君台観左右帳記》がのこされた。…
…足利義政に仕えた同朋衆(どうぼうしゆう)の一人で,幕府関係の芸能全般に幅広く活躍した。真能ともいう。…
…将軍家の保護を得た五山にかわり,林下の大徳寺が社会各層の帰依を得て隆盛に向かうのも,応仁・文明の乱前後からで,《狂雲集》を著した一休は,後世にも大きな影響を及ぼした。 さて武家社会では,将軍家を中心に,諸分野にわたる芸能者がこれに近侍奉仕したのが特徴で,猿楽の音阿弥や作庭の善阿弥・小四郎・又四郎3代,同朋衆では唐物奉行に当たった能阿弥・芸阿弥・相阿弥代,香,茶の千阿弥,立花(たてはな)の立阿弥などの名が知られる。このうち同朋衆は,義持,義教を経て義政の時代に最も活躍するが,とくに唐物同朋は将軍家による唐物収集を担当し,目利(めきき),保管,表装あるいは唐物唐絵をもってする座敷飾に当たった。…
※「同朋衆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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