阿羅野(読み)アラノ

デジタル大辞泉 「阿羅野」の意味・読み・例文・類語

あらの【阿羅野/曠野】[書名]

江戸中期の俳諧集。山本荷兮やまもとかけい編。3冊。元禄2年(1689)刊。芭蕉をはじめとする発句735句と、歌仙10巻を収める。芭蕉晩年の特徴である「軽み」の兆しがみられる。俳諧七部集の一。曠野集。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿羅野」の意味・わかりやすい解説

阿羅野
あらの

『俳諧(はいかい)七部集』の第3集。3冊からなる。荷兮(かけい)編。1689年(元禄2)刊。上下2巻は発句集、員外は連句集。発句集では荷兮、越人(えつじん)、芭蕉(ばしょう)、其角(きかく)ら蕉門俳人を中心とし、そのほかに宗祇(そうぎ)、宗鑑、貞室、忠知(ただとも)、季吟(きぎん)ら古人や他門の俳人の発句など730余句を収録。古人の句が多いのは不易(ふえき)の句体を示すことを目的としたためであり、そこに元禄(げんろく)(1688~1704)の新しい方向が示されている。員外は蕉門連衆による歌仙9巻、半歌仙1巻を収録するが、許六が「あら野の時、はや炭俵、後猿(続猿蓑(さるみの)のこと)のかるみは急度(きっと)顕(あらわ)れたり」(宇陀法師(うだのほうし))と指摘するように、軽みの新風がみられるのは注目に値しよう。なかでも芭蕉、越人両吟歌仙1巻は、『冬の日』から『猿蓑』への推移を示すものとして評価されている。

[雲英末雄]

『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿羅野」の意味・わかりやすい解説

阿羅野
あらの

江戸時代中期の俳諧撰集。『曠野』とも書く。橿木堂 (山本) 荷兮 (かけい) 編。3冊。元禄2 (1689) 年刊。『俳諧七部集』のうちの一集で,『冬の日』『春の日』に次ぐもの。芭蕉晩年の俳風「かるみ」の萌芽がみられ,ことに芭蕉,越人の両吟歌仙は,『冬の日』より『猿蓑』への推移を示すものという。同じ編者続編に『曠野後集』 (93) がある。

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