江戸中期の俳人佐久間柳居(りゅうきょ)(1695―1748)が蕉風(しょうふう)俳諧の発展過程を明らかにするため、芭蕉(ばしょう)関係の撰集(せんじゅう)より『冬の日』(一冊、1684)、『春の日』(一冊、1686)、『阿羅野(あらの)』(三冊、1689)、『ひさご』(一冊、1690)、『猿蓑(さるみの)』(二冊、1691)、『炭俵(すみだわら)』(二冊、1694)、『続猿蓑』(二冊、1698)の7部12冊を撰定し、刊行したもの。享保(きょうほう)(1716~1736)末年にはすでに刊行されていたらしいが、本書が広く流布するのは1774年(安永3)子周(ししゅう)編の小本(こほん)二冊本の『俳諧七部集』の刊行からである。本書の流布により各地に芭蕉復興運動がおこり、いわゆる中興俳諧の興隆をみるに至ったのは注目すべきである。なお7部の撰定に関し、貞門(ていもん)・談林(だんりん)時代の作品を加えるべきだとか、不適当なものを他と差し替えるべきだとか等の異論も出、また変風の明らかな『冬の日』『猿蓑』『炭俵』の3部で十分とする意見も出され、芭蕉の研究が活発化した。本書は近世後期には、半紙本、小本、中本、横本などさまざまな書型で刊行され、広く一般に流行した。
[雲英末雄]
『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』
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俳諧撰集。柳居編か。1732年(享保17)ごろ成立,刊か。芭蕉関係の俳諧撰集中,主要なものとして選ばれた7部,《冬の日》《春の日》《曠野》《ひさご》《猿蓑》《炭俵》《続猿蓑》から成る。去来,許六,支考ら芭蕉直門の間でも代表的な撰集として話題になっていたものを柳居が撰定したものと思われる。74年(安永3)に子周編の小本2冊本が刊行されて以後,広く流布した。
執筆者:石川 八朗
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