雀部郷(読み)ささいべごう

日本歴史地名大系 「雀部郷」の解説

雀部郷
ささいべごう

和名抄」にみえる。高山寺本・刊本とも訓を欠くが、参河国雀部郷を「散々倍」(刊本)、上野国雀部郷を「佐々伊倍」(刊本)と訓じる。郷内に立荘された雀部庄を、乾元二年(一三〇三)四月三〇日付けんによ譲状(松尾大社文書)に「さゝいへのしやう」とみえるので、「ささいべ」を採った。

「日本地理志料」は「天孫本紀、玉勝山代根古命雀部連、蘇宜部首等祖也、蘇宜部即宗部也、与六人部氏同系、其族居此、因名」と記す。天田郡内に宗部そかべ六部むとべ・雀部の三郷が接近してあるのは、古代各郷の先住者がその祖を一にしたことと関係があるように思われる。


雀部郷
ささべごう

「和名抄」東急本に「散々倍」と訓ずる。天平勝宝二年(七五〇)五月一五日の造寺所公文(正倉院丹裏古文書)に「宝飫郡形原郷戸主雀部小虫戸口雀部御垣守」とある。

「三河国古蹟考」に「雀部方廃、今呼一宮近邑、曰篠目郷、是雀部之遺也」の説に始まり、宝飯郡一宮いちのみや町の地をさすことについて諸説異論がない。「日本地理志料」には「一宮・豊津・橋尾・金沢・松原大木長山・足山田・西原諸邑、盖其地也」とする。豊川左岸の旧金沢かなざわ(現一宮町)を含むことについては問題が多い。金沢村は旧養父やぶ村と御薗みその村の合併したもので、八名やな郡の養父郷の故地と考えられ、河道の変遷も考えがたいので除くべきであろう。


雀部郷
ささいべごう

「和名抄」高山寺本は訓を欠き、東急本には「佐々伊部」と訓ずる。現佐波さわさかい伊与久の十三宝塚いよくのじゆうさんぽうづか遺跡からは「雀」とみられる刻字瓦が出土している。「日本地理志料」は旧境町を遺名とし、郷域もこの地に比定する。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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