雄長老(読み)ゆうちょうろう

精選版 日本国語大辞典 「雄長老」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐ちょうろう ‥チャウラウ【雄長老】

安土桃山時代狂歌師、僧。正しくは英甫永雄。永雄長老とも。京都建仁寺塔中如是院長老。父は武田信重。母は細川幽斎の妹、宮川尼。その著「雄長老詠百首」を収録した「新撰狂歌集」は狂歌撰集の最初刊本といわれる。慶長七年(一六〇二)没。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雄長老」の意味・わかりやすい解説

雄長老
ゆうちょうろう
(1547―1602)

安土(あづち)桃山時代の禅僧、狂歌作者。名は永雄英甫(えいゆうえいほ)。京都南禅寺住持にまでなったので雄長老とよぶ。別号、武、小渓、玩隠叟(がんいんそう)。若狭(わかさ)(福井県)武田氏の出身で母は女流狂歌作者として名高い宮川尼(みやがわに)、一代の武人歌学者細川幽斎(ゆうさい)は叔父にあたる。幼にして仏門に入り建仁(けんにん)寺の文渓永忠に随侍し、のち建仁寺、南禅寺の住持になった。漢詩文漢和聯句(かんなれんく)などに優れ当時五山の僧侶(そうりょ)中五指の一人に数えられた。だが後世文学史上彼を著名にしたのは余技の狂歌で、1589年(天正17)につくり中院通勝(なかのいんみちかつ)に批評を請うた『詠百首狂歌』は、痛烈な風刺磊落(らいらく)な笑いに満ちてとくに有名である。

 桜にはあらぬ春べをこきまぜて枝をたれたるはこ柳かな
森川 昭 2017年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「雄長老」の意味・わかりやすい解説

雄長老 (ゆうちょうろう)
生没年:1535-1602(天文4-慶長7)

安土桃山時代の禅僧,狂歌作者。永雄英甫(えいゆうえいほ)。南禅寺の住持になったのでふつう雄長老と呼ぶ。正しくは永雄長老。若狭武田氏の出身で,宮川尼は母,細川幽斎は叔父に当たる。漢詩文もよくしたが,中院通勝(なかのいんみちかつ)が評語を加えた《詠百首狂歌》は豪放な笑いや鋭い風刺によってとくに名高い。〈桜にはあらぬ春べをこきまぜて枝をたれたるはこ柳かな〉(《詠百首狂歌》)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雄長老」の意味・わかりやすい解説

雄長老
ゆうちょうろう

[生]天文4(1535)
[没]慶長7(1602).9.16. 京都
室町時代後期~安土桃山時代の禅僧,狂歌作者,漢詩人。名は英甫永雄。別号,武牢,小渓。若狭の豪族武田信重の子。母は細川幽斎の姉,宮川尼。天正 14 (1586) 年建仁寺住持,文禄3 (94) 年南禅寺にも住む。五山文学の最後をなす禅僧で,狂歌,連歌をよくし近世狂歌の祖と呼ばれる。漢詩集『倒痾集』,狂歌集『詠百首狂歌』。編著『新撰狂歌集』がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「雄長老」の解説

雄長老 ゆうちょうろう

英甫永雄(えいほ-えいゆう)

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android