安土(あづち)桃山期の武将、歌人。近世細川家初代。天文(てんぶん)3年4月22日、三淵晴員(みぶちはるかず)の二男に生まる。一説に足利(あしかが)12代将軍義晴(よしはる)の四男。幼名万吉、与一郎と称す。1539年(天文8)細川元常(もとつね)の養子となり、46年、13代義輝(よしてる)(初名義藤(よしふじ))の一字をもらい藤孝(ふじたか)という。73年(天正1)織田信長から山城(やましろ)国(京都府)長岡の地を与えられ長岡姓を称す。80年丹後(たんご)国(京都府)宮津に居城。82年本能寺の変で剃髪(ていはつ)し幽斎玄旨(げんし)と称し、嫡子忠興(ただおき)に譲って丹後田辺(たなべ)城に移る。のち豊臣(とよとみ)秀吉の下で活躍。三条西実枝(さねえだ)に歌、千利休(せんのりきゅう)に茶を学び奥儀を極める。関ヶ原の戦いで石田三成(みつなり)方に攻められ田辺に籠城(ろうじょう)、死を決したが、歌道の絶えることを恐れた後陽成(ごようぜい)帝の勅命で和睦(わぼく)、古今伝授は八条智仁(としひと)親王に無事伝えられた。『詠歌大概抄(たいがいしょう)』『伊勢(いせ)物語闕疑抄(けつぎしょう)』『衆妙(しゅうみょう)集』の著あり、有職故実(ゆうそくこじつ)にも詳しい。子忠興は、関ヶ原の戦功で豊前(ぶぜん)・豊後(ぶんご)三十九万余石を与えられた。慶長(けいちょう)15年8月20日京都に没す。京都南禅(なんぜん)寺天授庵(てんじゅあん)に葬られる。追福のため、忠興は小倉(こくら)(福岡県北九州市)に泰勝院を建て、肥後(熊本県)入国後に移して泰勝寺とした。
[森田誠一]
『土田将雄著『細川幽斎の研究』(1976・笠間書院)』
(石田晴男)
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…なお,室町期には連歌が隆盛するが,理論面でも心敬の《ささめごと》,宗祇の《吾妻問答》等,みるべき連歌論を生み出したのであった。
【近世】
織田信長,豊臣秀吉,徳川家康に重臣として遇せられた細川幽斎は,二条派の歌人で,《詠歌大概抄》ほかの〈歌論〉がある。幽斎が古今伝授の唯一人の維持者であったために,田辺城が石田三成に包囲されたおり,勅命によって救命されたエピソードは有名である。…
…その子孫が公条(きんえだ)―実澄(さねずみ)(実枝)―実条であり,彼らの手で《明星抄》《山下水(やましたみず)》が成った。実枝の甥の中院通勝(なかのいんみちかつ)が細川幽斎の協力を得て完成した《岷江入楚(みんごうにつそ)》もこの学統を受けたもので,中世古注の集大成である。なお室町末から江戸初期にかけては,ほかに《覚勝院抄》《孟津(もうしん)抄》《紹巴(じようは)抄》などの古注があり,特に《湖月抄》は簡便な注によって,永く標準的な流布本の位置を占めた。…
…《古今和歌集》に関する秘伝の授受。中世の学問芸能では,特に重要な部分を秘伝として伝承することが多かった。歌学においては《源氏物語》や《伊勢物語》などの秘伝が伝えられたが,その中で最も権威をもっていたのが古今伝受である。《古今和歌集》は和歌の規範とされていたため早くからその解釈に説が分かれ,六条家や御子左家(みこひだりけ)など歌道の家々には,それぞれの解釈が秘伝として伝えられていた。室町時代に入って二条家の末流である東常縁(とうのつねより)が,東家に伝わる秘伝のほかに頓阿の流れをくむ尭孝の秘伝をあわせて,いわゆる古今伝受の原型をつくった。…
…戦国末期~近世初頭の武将,文化人。三淵晴員の子で,細川元常の養子。兵部大輔,幽斎玄旨と号する。足利義輝の御供衆であったが,義輝が松永久秀らに殺されるにおよび,その弟一乗院覚慶(義昭)を擁立。1568年(永禄11)織田信長入京のときには足利軍の大将として奮戦,山城勝竜寺城城主となる。義昭と信長不和のときは信長にくみし,姓を長岡と改める。その後は,おもに明智光秀とともに丹波,丹後の攻略に当たり,80年(天正8)丹後の国主となる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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