改訂新版 世界大百科事典 「雑誌広告」の意味・わかりやすい解説
雑誌広告 (ざっしこうこく)
雑誌は,他の広告媒体にくらべて,読者が年齢,職業,男女,趣味などで明瞭に区分されているため,特定の広告対象層に広告を到達させやすい点や,高い回読率を特性とするので広告露出を反復できる点などで有利であり,かつ全国的な媒体である。カラー広告の媒体として優れ,一方読者も雑誌購買を通じて期待する商品広告を能動的に受容する。雑誌広告の起源は17世紀半ばイギリスの《ニューズブック》の時代と推定される。日本でも1675年(延宝3)ころすでに書物を利用した広告が現れており,(1)巻末に同じ版元あるいは他の版元の書籍の広告掲出,(2)記事の中に広告をしくむ,(3)書籍自体を景物本とする,(4)本以外の薬品,化粧品などの広告の掲載,の4通りがある。山東京伝の黄表紙《箕間尺三人酩酊(みけんじやくさんにんなまえい)》(1794)を雑誌とみなすならば,それに載せた紙タバコ入れ店開業広告が(4)の最初のものとなる。
1867年(慶応3)刊行の《西洋雑誌》を日本雑誌の祖とすれば雑誌広告の嚆矢は巻5掲載の中外堂の書籍広告といえよう。徳富蘇峰の《国民之友》第6号(1887)に〈之に広告するの有益なる恐らくは日刊新聞の比に非ざるべし〉の社告があるように,雑誌広告は雑誌媒体の成長とともに注目を集めた。当時は,別刷りの色ページに一括して広告ページを作り,本文記事をさしはさむ形で掲載することが多かった。本文記事に広告が入り込むようになったのは大正初期からである。戦後とくに1956年の週刊誌ブーム以降雑誌広告は急激に展開した。広告面のビジュアル化やワイド化が進み,広告キャンペーンが盛んになる62年ころから,記事そのものが広告化することも多くなった。現在では広告収入の確保は雑誌経営の安定のためきわめて重視されており,雑誌の売上金額を上回ることも少なくない。なお,日本の広告費中の雑誌広告の割合は,1960年代以来5%台で,ラジオ広告と拮抗していたが,近年は6%台となり,ラジオ広告を凌駕している。
執筆者:島守 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報