改訂新版 世界大百科事典 「雛形本」の意味・わかりやすい解説
雛形本 (ひながたぼん)
建築を作る上の技術あるいは意匠の手本などを内容とする江戸時代の木版本。雛形とは実物をかたどって小さく表現したもので,模型や手本もそのひとつである。文章で説明するよりわかりやすいことから設計上の手本として使われ,後に技術の図解や意匠見本も雛形と呼ばれるようになった。1655年(明暦1)の《新篇雛形》は古い例で,特に江戸中期以降多数出版された。書院造の座敷の違棚の意匠見本である棚雛形,数寄屋造の意匠を示す数寄屋雛形,部材の比例を示す木割,立体幾何学を応用した部材の組立て方法の規矩,大工の技術を図解した大工雛形など多種類に及び,大工技術の伝達および普及,建築の建て主の意匠の選択に大きな役割を果たした。
→規矩術
執筆者:西 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報