違い棚(読み)チガイダナ

デジタル大辞泉 「違い棚」の意味・読み・例文・類語

ちがい‐だな〔ちがひ‐〕【違い棚】

床の間の脇にある棚で、2枚の棚板を左右に食い違いに取り付けたもの。上下の棚板の間に海老束えびづかを入れ、上の棚板の端に筆返しをつける。
[類語]釣り棚飾り棚神棚網棚陳列棚藤棚水屋ショーケース

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精選版 日本国語大辞典 「違い棚」の意味・読み・例文・類語

ちがい‐だなちがひ‥【違棚】

  1. 〘 名詞 〙 二枚の棚板を左右段違いに取り付けた棚。床の間、書院などの脇に設ける。ちがえだな。とこだな。⇔一文字棚
    1. 違棚〈四十八棚之図〉
      違棚〈四十八棚之図〉
    2. [初出の実例]「客殿立屏風、唐絵四五幅懸之、厨子ちかゐ棚等置く物之在り」(出典看聞御記‐応永二六年(1419)七月七日)

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改訂新版 世界大百科事典 「違い棚」の意味・わかりやすい解説

違棚 (ちがいだな)

書院造を特徴づける構成要素の一つで,主座敷を飾る固定装置として押板(おしいた),付書院と組み合わせる。置棚の一種として違棚が出現したのは室町時代中期ごろで,会所座敷飾の装置の一つに厨子(ずし),卓とならんで違棚が使用されている。会所の恒常化とともに会所座敷の飾りの場として,押板,付書院と組み合わせて座敷の一隅に固定されるようになった。足利義政が経営した小川殿や東山殿の諸殿舎で,主座敷に押板,付書院と組み合わせた違棚の用例が《御飾書》に見える。また東山殿の遺構の一つである慈照寺銀閣寺)東求堂の書院,同仁斎の一隅に付書院と組み合わせた違棚がつくりつけられていて,違棚の最古の遺構として著名である。近世に入ると書院造形式の定型が完成し,違棚も発達して変化に富んだ諸種の型を生んでいる。江戸時代には木割書(木割)が編まれ,出版普及したが,そのうちに〈棚雛形〉があり,違棚の標準型から変形型まで48種を分類紹介している。違棚の間口は1間,半間を標準とし,1間半以上は特例であった。その基本的構成は天袋と複数の棚板の組合せ,とくに棚板の組合せに多様な変化を生んでいる。棚板はケヤキ材が普通で,ときには種類の違った銘木からつくり,その材質の変化と組合せに技巧を凝らしたものがある。桂離宮桂棚はその好例である。
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百科事典マイペディア 「違い棚」の意味・わかりやすい解説

違棚【ちがいだな】

床の間の脇に2枚の板を左右段違いにして作りつけた棚のこと。上板と下板を結ぶ束(つか)をえび束,上板の端の突起を筆返しという。いけ花,装飾品等を置き,形式は多様であるが,天袋地袋を併設することが多い。寝殿造に用いられた物品を収納する厨子(ずし)棚が,中世の書院造で建築化されたもの。
→関連項目茶箪笥

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「違い棚」の意味・わかりやすい解説

違い棚
ちがいだな

二枚の棚板を左右から食い違いに吊(つ)った棚で、工芸品などを飾るもの。上下の棚板の間にある束(つか)を海老束(えびづか)また雛(ひな)束という。床の間、書院のわきに設けられる。普通、一間(約1.82メートル)か半間の間口で、上方に天袋(てんぶくろ)、下方に地袋(じぶくろ)が設けられる。この設備全体も違い棚とよばれる。床の間、書院とともに和風室内装飾の重要なもので、室町時代に始まった。元来は置き棚であったが、やがて作り付けとなったもので、江戸時代には書院造住宅のなかで大いに発展した。

[小泉和子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「違い棚」の意味・わかりやすい解説

違い棚
ちがいだな

書院,床の間とともに書院造の客室設備の一つ。元来,この違い棚は,座右に置く移動ができる書棚であったが,室町時代末期になって床の間と左右して客室につくりつけられ,室内装飾の場となったもので,棚は霞棚で段々になり,上段より順に,盃,肩衝,香炉などが飾られた。なお,違い棚の上には袋戸,また最下段の棚の下には地袋戸が設けられ,さらに,その初めの頃のものにおいては,床の間と同じく床に板が置かれ,そこに食籠などが配されていた。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「違い棚」の解説

ちがいだな【違い棚】

書院造り座敷飾りの一つ。床の間や書院の脇(わき)の柱間(はしらま)などに作り付けられた棚。2枚の棚板を段違いに取り付けたもの。

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世界大百科事典(旧版)内の違い棚の言及

【棚】より

…この棚の大きさは間口が間半,1間のものが多く,構成は棚板だけのもの,袋棚や厨子棚を組み合わせたものなど種々ある。違棚は複数の棚板を左右から上と下にくい違いに釣った棚で,香炉,食籠,花瓶,茶器などを飾る。袋棚は床の間や棚の上方または下方に設けられる小戸棚で,引違いの戸襖が付く。…

【床の間】より

…奥壁の上部の天井廻縁(てんじようまわりぶち)に折釘(おれくぎ)を打ち,1幅から4,5幅が対になった軸装の書画を掛けられるようにする。床板の上には香炉,花瓶,燭台からなる三具足(みつぐそく)を置き,床の間の両隣には書院と違棚(ちがいだな)を設けるのが正式である。このような書院造の床の間に対して,茶室や数寄屋にも書画を飾る床の間が設けられるが,この場合は形式はかなり自由に扱われ,樹皮のついた床柱や形の変わった床柱が使われ,内部を壁で塗りまわした室床(むろどこ)や洞床(ほらどこ),落掛から床の上部だけを釣った釣床(つりどこ),入込みにならず壁面の上部に軸掛けの幕板を張っただけの織部床(おりべどこ)など,多様な形式のものがある。…

※「違い棚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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