書院造を特徴づける構成要素の一つで,主座敷を飾る固定装置として押板(おしいた),付書院と組み合わせる。置棚の一種として違棚が出現したのは室町時代中期ごろで,会所の座敷飾の装置の一つに厨子(ずし),卓とならんで違棚が使用されている。会所の恒常化とともに会所座敷の飾りの場として,押板,付書院と組み合わせて座敷の一隅に固定されるようになった。足利義政が経営した小川殿や東山殿の諸殿舎で,主座敷に押板,付書院と組み合わせた違棚の用例が《御飾書》に見える。また東山殿の遺構の一つである慈照寺(銀閣寺)東求堂の書院,同仁斎の一隅に付書院と組み合わせた違棚がつくりつけられていて,違棚の最古の遺構として著名である。近世に入ると書院造形式の定型が完成し,違棚も発達して変化に富んだ諸種の型を生んでいる。江戸時代には木割書(木割)が編まれ,出版普及したが,そのうちに〈棚雛形〉があり,違棚の標準型から変形型まで48種を分類紹介している。違棚の間口は1間,半間を標準とし,1間半以上は特例であった。その基本的構成は天袋と複数の棚板の組合せ,とくに棚板の組合せに多様な変化を生んでいる。棚板はケヤキ材が普通で,ときには種類の違った銘木からつくり,その材質の変化と組合せに技巧を凝らしたものがある。桂離宮の桂棚はその好例である。
執筆者:川上 貢
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…この棚の大きさは間口が間半,1間のものが多く,構成は棚板だけのもの,袋棚や厨子棚を組み合わせたものなど種々ある。違棚は複数の棚板を左右から上と下にくい違いに釣った棚で,香炉,食籠,花瓶,茶器などを飾る。袋棚は床の間や棚の上方または下方に設けられる小戸棚で,引違いの戸襖が付く。…
…奥壁の上部の天井廻縁(てんじようまわりぶち)に折釘(おれくぎ)を打ち,1幅から4,5幅が対になった軸装の書画を掛けられるようにする。床板の上には香炉,花瓶,燭台からなる三具足(みつぐそく)を置き,床の間の両隣には書院と違棚(ちがいだな)を設けるのが正式である。このような書院造の床の間に対して,茶室や数寄屋にも書画を飾る床の間が設けられるが,この場合は形式はかなり自由に扱われ,樹皮のついた床柱や形の変わった床柱が使われ,内部を壁で塗りまわした室床(むろどこ)や洞床(ほらどこ),落掛から床の上部だけを釣った釣床(つりどこ),入込みにならず壁面の上部に軸掛けの幕板を張っただけの織部床(おりべどこ)など,多様な形式のものがある。…
※「違い棚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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