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規矩術 きくじゅつstereotomy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

規矩術
きくじゅつ
stereotomy

曲尺 (かねじゃく) を用いた伝統建築における立体幾何学的な作図法で,屋根勾配に応じた隅木垂木の延び (長さ) の割出し仕口などの納まり墨付けする方法。規矩術では曲尺の表目盛と裏目盛を使って,勾配の割出しにタンジェント (正接) を用いる。

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デジタル大辞泉の解説

きく‐じゅつ【規×矩術】

さしがねを用いて、建物の垂木(たるき)などの構造部の実形を立体幾何学的に求め、直接木材に作図する方法。規法。

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百科事典マイペディアの解説

規矩術【きくじゅつ】

古くから日本に伝承された建築技術で,部材を加工処理するとき,その立体幾何学の図式解法を曲尺(かねじゃく)によって行う法。規はコンパス,矩は直角定規の意味。

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世界大百科事典 第2版の解説

きくじゅつ【規矩術】

規はコンパス,矩は直角定規の意味で,規矩は両者をもとにしてきちんと作図すること,さらには一般的に規則,手本をも意味した。建築では,指矩(さしがね)(曲尺(かねじやく)ともいう)を使い,屋根の小屋組や軒を構成する部材,あるいは部材と部材を接続する仕口(しぐち)や継手(つぎて)の寸法および形状を作図することをいう。規矩術の発生は古代にさかのぼると思われるが,明確な資料はなく,当初は大工が経験をもとにして工夫したものであろう。

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大辞林 第三版の解説

きくじゅつ【規矩術】

指し矩がねを用いて垂木や隅木などの建築部材の実形を幾何学的に割り出し、材木に墨付けをする技術。江戸幕府大棟梁の平内へいのうち延臣(1791~1856)によって大成された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

規矩術
きくじゅつ

規は円を描く「ぶんまわし」、矩は直角に曲がった物差し「差し金(がね)」「かね尺(曲尺)」のことであり、これらを用いる術を規矩術という。次の3通りの意味をもつ。
(1)木造建築の部材の作図法 日本の木造建築は、いろいろな形の部材を組み合わせて建造される。水平・垂直方向は容易であるが、屋根の傾斜に応じて材木を望む形に刻むのには、立体幾何的なむずかしい作図を必要とする。屋根の軒に反りをつける、隅の部分の垂木(たるき)を放射状に出すとなると、さらに複雑になる。その作図の道具は、現在も使われている差し金である。L字形の金属性の物差しで、表にはかね尺の寸、裏にはその倍の長さに目盛りが刻まれている。のような勾殳玄(こうこげん)(直角三角形)で1尺(10寸)の股に配する鉤(勾)の寸、すなわち勾配(tanθ)の量を基本にし、各部の長さ、比率を基に三角関数を用いずに直接材木に線を引く。θが45度のときは倍の裏目を巧妙に用いる。古くから行われてきた技術であろうが、複雑な木組みのみごとさには驚嘆すべきものがある。江戸幕府の大棟梁(とうりょう)、平内廷臣(へいのうちまさおみ)(1799―1856)の『匠家矩術新書』(1848)は、規矩術に初めて数理的な根拠を与え、体系づけた書である。規を使わないので矩術という。
(2)数学の問題を計算でなく作図で解く方法 『匠家矩術新書』の冒頭に、乗除から開平、開立(かいりゅう)までをかね尺で行う方法が記されている。直角三角形の相似などを基にして、問う量を長さで図上に求める。自序にあるように近似解法ではあるが、そろばんを用いないことに意味がある。同種の、より高度な書に吉田重矩(しげのり)『規矩術図解』(1820)がある。規と矩を用いて乗除から方程式解法、正多角形作図などを行い、立体図形をも扱っている。
(3)紅毛(オランダ)流と称される測量術 寛永(かんえい)年間(1624~1644)に樋口権右衛門(ひぐちごんえもん)がオランダ人カスハル(カスパルともいう)から伝授されたといわれる測量術である。おもな方法は現在の平板測量にあたり、見通した線で「量盤(けんばん)」上に地形の縮図を作成する。この術の規は西洋の「渾発(コンパス)」であり、脚を開いて線分の長さ、倍率を計る役目にも使われる。樋口からのおもな流れは、清水貞徳(さだのり)を祖とする清水流で、伝書はすべて写本である。刊本には、別の流れに属する村井昌弘(まさひろ)の『量地指南』(1733)、『量地指南後編』(1754)がある。後者は規矩術に限らず、江戸時代前半の測量術を集大成した書である。[松崎利雄]
『大矢真一解説『江戸科学古典叢書9 量地指南』(1978・恒和出版) ▽狩野勝重解説『江戸科学古典叢書16 隅矩雛形/矩術新書』(1978・恒和出版) ▽村松貞次郎著『大工道具の歴史』(岩波新書)』

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