紙の上下・左右または四隅に雲の形を重ね漉(ず)きした漉き模様紙の一種。藍(あい)などで染めた紙をもとの繊維にまでほぐし、別に漉き上げた湿紙の上に、そのほぐした繊維の液を少しずつすくい上げて波形の模様をつくる。藤原行成(ゆきなり)筆と伝えられる『雲紙本和漢朗詠集』(御物)は有名。雲紙の名は室町時代から一般化し、江戸時代になると文献に頻出する。最初の発明者も年代も不明。近世から摂津国名塩(なじお)(兵庫県西宮市)や越前(えちぜん)国今立(いまだて)(福井県)などで、主として鳥の子系統の紙で加工され、色紙、短冊などに使用された。打曇(うちぐもり)(内曇とも書く)、飛雲(とびくも)、小(こ)飛雲、雲華紙(うんげし)(雪降り紙)、雲肌紙など各種の変形もくふうされ、工芸紙として装飾面で発達している。手漉きによってのみつくられる芸術紙である。
[町田誠之]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…打曇は紙の天地にたなびく雲のようにかかり,飛雲は紙のあちこちに浮遊する雲のようにかける。(2)雲竜紙(うんりゆうし)(雲紙(くもがみ)) 着色した繊維や手ちぎりの長い繊維で漉いた紙で,水の変化のある動きが長い繊維にあらわれる。短い繊維のミツマタ等を使えば雲肌紙(くもはだがみ)となる。…
※「雲紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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