電力を供給するための家庭内配線をも含めた50/60ヘルツの低い周波数の電力線に、10キロヘルツから30メガ(百万)ヘルツという高い周波数で変調した情報を重畳して送受すること。略称PLCまたはPLT。電力関係者は「電力線搬送通信」ともよんでいる。
日本では電力事業用に送電線を利用した「電搬」とよぶ通信システムが1951年(昭和26)に給電指令や保線電話用に登場し、監視・制御データや送電設備の保守のための情報用にと用途を広げたが、現在では光通信にその座を譲っている。1980年代後半から高圧配電線を利用して開閉器などの機器を遠隔制御・監視する配電自動化システムが、90年代中ごろから低圧配電線や屋内配線で電力計の料金(時間帯)切替え・遠隔検針などの電力事業を効率化するためのシステムが整備された。その他にも、家電機器の制御などのホームオートメーション、セキュリティシステム、街灯・コインロッカーなどの営業用システムに使用されるようになった。さらに、2006年に登場した高速電力線通信により家庭内でパソコンなどのブロードバンド・ネットワーク(広帯域通信網)を構成することが可能となっている。
かつては電力線通信の使用周波数は10~450キロヘルツで、データ転送速度は毎秒9600ビット程度であったが、総務省が2006年(平成18)10月から屋内に限り2~30メガヘルツの電力線通信を認めたため、屋内の電源にコンセントを差し込むだけで、最大毎秒200メガビットまで転送可能な、種々の規格の高速電力線通信機器が現れ、急速に普及している。海外では高速電力線はすでに一部の国で実施され、屋外にも拡張できる地域もあるが、実証実験中の国も多い。
高速電力線通信を利用すると、一般家庭ではブロードバンド回線を屋内に延長でき、しかも無線LANのような壁などによる電波障害を考えずに自由にホームネットワーク(LAN環境)を構成できる。ホームネットワークを利用すれば外出先から携帯電話でエアコン、洗濯機、電子レンジなどの遠隔制御、テレビの録画予約、テレビとパソコンを連携させて録画した映画を別室のパソコンで見ることもできる。また、家庭内の監視カメラや施錠の確認、不法進入者や火事などの必要箇所への連絡などのホームセキュリティにも有効となる。マンション、アパートなどでは各戸に新たに通信線を架設せずにインターネットサービスが受けられ、LAN環境が必須のオフィスではLANの構築・追加が容易となる。
現在のところ、親機から子機十数台にインターネットを接続できるPLCアダプターなどの機器の規格がメーカーにより異なる場合があるので注意が必要であり、また高速電力線通信による漏洩(ろうえい)電波のため短波無線を利用している通信機器や医療機器への影響への配慮も必要で、ノイズを発生するアイロン、掃除機、調光器付き照明器具などの電化製品と併用すると通信速度が遅くなるという欠点もある。しかし、PLCアダプターにはセキュリティ対策は十分なされており、家庭内ネットワークとしては最大毎秒200メガビットと無線LANや有線LANより速い。
[岩田倫典]
『日経コミュニケーション編『高速電力線通信のすべて――製品・技術・市場・開発動向を完全網羅』(2006・日経BP社、日経BP出版センター発売)』
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
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